1991 Fiscal Year Annual Research Report
新しい型のび漫性体幹被角血管腫:尿中の異常代謝産物の精製・構造決定と欠損酵素解明
Project/Area Number |
02454279
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
神崎 保 名古屋市立大学, 医学部, 助教授 (80118801)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平林 義雄 理化学研究所, 国際フロンティア糖情報部門, 主任研究員 (90106435)
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Keywords | びまん性体幹被角血管腫 / αーNーアセチルガラクトサミニデ-ス / 神崎病 / ライソゾ-ム蓄積症 / シンドラ-病 |
Research Abstract |
1986年,我々はある一人の日本人女性患者を診察した。彼女はほぼ全身に無数の毛細血管の拡張をもち,典型的なファブリ-病又はそれの類似症患をもっていることを示唆した。ところが尿および血液の生化学的諸検査から,この患者は未知の疾患をもっていることが分かった。そこでそれがいかなる疾患であるか調べたところ,尿に多量のシアル酸を含んだ糖蛋白が排泄されているのを見出した。そしてついにこの物質を精製しての構造式を明らかにした(Lancet,1989)。次にその物質のより容易な検査方法(Clin.Chim.Acta,1990)と物質の生化学的特性を報告した(J.Biol.Chem.,1990)。 今年度はこの研究をさらに進め,この疾患がαーNーacetylgalactosaminidaseの欠損により起こることを見出しこれを報告した(J.Clin.Invest.,1991)。この間生化学的研究だけでなく,患者の臨床的研究も遂行し,この疾患が腎糸球体も含めた全身性の小血管を侵す疾患であることを明らかにした(皮診,1991)。この疾患の本態が解明されたので,これを著書しても報告した(皮膚科診断治療大系,講談社,1991)。また,これまでの総活を日本先天代謝異常学会雑誌にも報告した(1991)。 ここで最近になり,この神崎病と命名された疾患と,ドイツから報告のあった重症の中枢神経障害を示すシンドラ-病との関係が急に脚光を浴びてきた。なぜなら,この2疾患は臨床的には何の共通点もない疾患ながら,驚くべきことに,その生化学的特性は同一,即ち両者とも同一酵素の欠損により起こることが判明したからである(小児内科,1991)。現在のこの問題を解明するために,この酵素をコ-ドしている遺伝子の解析を進めており,最終段階に入った状態にある。次年度の研究において,これを明らかにする予定である。
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