Research Abstract |
特殊な体外循環技術や装置を持たない所でも施行可能な,生体に対する侵襲性の少ない血管内留置型人工肺を開発し,その安全な施行方法を工夫し,ベンチレ-タでもガス交換が不十分な重症呼吸不全患者,或いはベンチレ-タ使用を避けたいような呼吸不全患者の救命手段にすることを目的とした。 このため大腿静脈あるいは頚静脈などから挿入し,上下大静脈内に留置し,これと接して流れる血液との間で,酵素供給,CO_2除去が行える中空糸型人工肺を各種試作し,その形状,大きさ,糸のたるみ,強度,ガス流抵抗,最大ガス流量などを検討してきた。用いた中空糸は,クラレ社製ポリオレフィン,外径250ミクロン,厚さ25ミクロンのもので,これを約500本束ねると集束固定部の大きさが外径約1センチメ-タとなった。この太さでは,通常の成犬の大腿静脈あるいは頚静脈内径に比して太過ぎて挿入できなかったので,外径8mmのものを試作し動物実験に供した。さらに細い静脈から,先ずガスの導管を挿入し,あとから中空糸部分を追加挿入し,表面積の広い人工肺を大静脈内で構築し,治療目的達成後は,再び分割して除去する方式を考え成案を得た。現在の工学では,経済的な意味で実現不可能であるが,将来有望な血管内人工臓器作成法として有用なアイデアである。 万一中空糸が血管内で破損してもガス塞栓を生じないように,陰圧でガス交換をする必要から,小型のバイブレ-ションポンプ,流量計,および圧力計を組合わせた吸引回路を試作した。マイナス250mmHgの陰圧で3l/分近いガス流量が得られた。ヘパリン投与下の犬の静脈内24時間留置では,全く血栓を認めなかったが,中空糸からの血液吸引があり,まだ人体への応用にはほぼ遠い。海外では,モルテンセンによるIVOX^<【○!R】>が100例以上の患者に使用され30%近い救命率が上がっているが,血栓,出血,人工肺の抜去困難症なども報告されている。簡便性において本法と大差ない体外式人工肺が開発された場合,両者の優劣はにわかには断じ難くなってきた。
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