Research Abstract |
臨床的研究としては,脳血管障害後遺症患者135名を対象に排尿障害について検討した結果,86%の患者は何等かの排尿障害を自覚し,47%に尿路感染があった.日常生活動作(ADL)が悪いほど排尿障害や尿路感染が多く,尿路感染の有無は残尿量と相関していた.別の脳血管障者患者75名での検討では,痴呆が無い患者では79%が排尿自立だったのに対し,痴呆患者の排尿自立は40%で,40%はオムツ排尿,20%は留置カテ-テルであった.過去3年間に排尿機能検査を行った63名の脳血管障害患者では,正常膀胱15名,過活動性膀胱38名,低活動性膀胱10名で,排尿筋無抑制収縮例は60%であった.排尿筋無抑制収縮は,前頭葉病変例の67%,大脳基底核病変例の67%,視床病変例の60%,内包に病変が及ぶ例の92%に認められた.尿道機能正常例は,大脳基底核病変例で53%であったが,前頭葉病変例では36%だった.不全尿道例は,大脳基底核病変例や視床病変例ではそれぞれ22%,18%であったが,前頭葉や内包病変例では43%,40%と多かった。 基礎的研究では,HRPを用いた神経解剖学的検討と,脳幹部微小電気刺激法を用いた電気生理学的研究を行った.ネコで排尿抑制部位である青斑下核にHRPとWGAーHRPを注入したところ,青斑下核は主に前頭回,直回,後S状回内側部,帯状回,前シルビウス回,視床下部の外側野,傍室核,中脳中心灰白質,中脳,橋,延髄の網様体,小脳内側核,脊髄中間灰白質などからの入力を受けると同時に各部位に出力しており,脊髄前索と対側の側索を下行して仙髄中間外側核とOnuf核にも投射していることが分かった.除脳イヌで橋排島中枢の微小電気刺激行ったところ,刺激の強さに応じて,排尿反射経路全体の興奮による持続の長い膀胱収縮も,排島反射経路の遠心路の興奮が主体である持続の短い膀胱収縮も,自由に誘発できた.排島反射の実験に有用なモデルと考えられる.
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