1990 Fiscal Year Annual Research Report
頭頸部癌における白血球増多症および高カルシウム血症の発症機序に関する研究
Project/Area Number |
02454457
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
作田 正義 大阪大学, 歯学部, 教授 (00028755)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 文弘 大阪大学, 歯学部, 助手 (80183698)
中澤 光博 大阪大学, 歯学部附属病院, 助手 (70217701)
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Keywords | 頭頸部癌 / 白血球増多症 / 高カルシウム血症 |
Research Abstract |
頭頸部癌患者のうち、高カルシウム血症と顆粒球増多症を併せもつ症例を経験した。この腫瘍をヌ-ドマウスに移植増殖させ、また継代培養細胞株を樹立した。この細胞を移植されたヌ-ドマウスは腫瘍の増殖につれて高Ca血症と顆粒球増多症を発症したが、腫瘍の切除により両症状は消失した。この結果、本腫瘍細胞は腫瘍自体から分泌されるなんらかの因子がこれらの両症状を引起こしていることが推測された。しかし、臨床症例を重ねていくうちに、同一症例が高Ca血症と顆粒球増多症の両症状を同時に発症しているもののみではなく、これら両症状の1つのみを発症している症例も少なからず認められた。即ち、この両症状は別々の機序で発症している可能性が示唆された。そこで、この両症状を各々単独で発症している頭頸部癌患者の腫瘍からヌ-ドマウス可移植性腫瘍および継代培養細胞系を樹立させて、分析を行った。その結果、この細胞系は各々ヌ-ドマウスに移植すると腫瘍の増殖とともに、臨床所見と同様の高Ca血症または顆粒球増多症を発症させ、しかも腫瘍の切除よりこの症状は消失した。従って、両症状は別の発症機序に基くことが明らかとなった。そこで、高Ca血症を発症させる腫瘍細胞系を用い、同症状の発症機序を検討した。その結果、同腫瘍細胞を移植されたヌ-ドマウスの血中にプロスタグランジンE_2(PGE_2)レベルの上昇が認められた。また、同細胞の培養上清(CM)中には高濃度のPGE_2が測定された。さらにこのCM中にはラット胎仔長管骨の骨吸収作用のあることが判明した。一方、腫瘍を移植されたヌ-ドマウスにインドメサシンを投与すると腫瘍増殖はほぼ完全に抑制され、また血中Ca濃度およびPGE_2レベルの部分的な抑制効果が認められた。即ち、本腫瘍による高Ca血症の発症および腫瘍増殖にはPGE_2が関与していると思われるが、他にもこの発症に関与する因子のあることが推測された。
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