三叉神経系における神経伝達機構の形態学的研究ー各種ペプチドおよびアミノ酸の役割ー

1991 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 02454464
• Research Institution: Osaka Dental University
• Principal Investigator: 上田 裕 大阪歯科大学, 歯学部, 教授 (10067001)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 足立 裕康 大阪歯科大学, 歯学部, 助手 (40140206)
• Keywords: 三叉神経脊髄路核 / 疼痛刺激 / ペプチド前駆体 mRNA / in situハイブリダイゼイション法 / ラット

Research Abstract

ラットの右上口唇にホルマリンを注入して疼痛刺激を与え、三叉神経脊髄路核尾側亜核(TNC)におけるpreprodynorphin(PPD),preprogalanin(PPG),preprotachykinin A (PPT),preprosomatostatin(PPSS),preprocholecystokinin(PPCCK)mRNAの発現とその時間経過をin situ hybridization法により検討した。さらに、右眼窩上部と右顎下部にホルマリン注入による刺激を与え、PPD mRNAの分布についても観察した。ホルマリン注入によりPPD、PPG、PPT mRNAは刺激側TNCのI、II層で増加が認められ、刺激後6時間までの増加が著しく、その後は減少を示し、48時間後でも増加を認めた。さらに、PPD mPNAは対側でもわずかながら増加を示した。これに対し、PPSS mRNA、PPCCK mRNAは刺激側と対側で明らかな差を示さなかった。眼窩上部に刺激を加えた場合、PPD mRNAは刺激側TNCの腹側で増加し、顎下部に刺激を加えた場合、背側で増加を認めた。これらのことより、dynorphin,galanin,tachykininは痛覚情報の伝達、あるいはその修飾に関与していることが示された。上口唇へのホルマリン注入例において、対側のTNCでもPPD mRNAの増加が認められたことにより、顔面のこの領域の一次知覚ニュ-ロンが反対側のTNCにも投射している可能性を示唆し、顔面からの痛覚情報は刺激を受けた部位により、それぞれTNCの特定の領域に入力されることが示された。なお、PPSS、PPCCK mRNAは本研究の実験条件ではその発現に変化がみられず、somatostatinとcholecystokininは前述の三種のペプチドとは異なった役割を担っている可能性が示された。