1990 Fiscal Year Annual Research Report
生体膜の動的微細構造の変化と細胞・器官の機能に関する総合的研究
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02454490
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小山 富康 北海道大学, 応用電気研究所, 教授 (50001681)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒磯 恒久 北海道大学, 応用電気研究所, 助教授 (30151145)
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Keywords | 心筋虚血・再潅流 / 心筋ミトコンドリア膜 / 動的微細構造 / 膜粘性 / 脂質分子の揺動角 / 脂質過酸化 / アドリアマイシン / 運動 |
Research Abstract |
教室製のナノ秒時間分解蛍光計を用い、生体膜に親和性の高い蛍光分子DPHをプロ-ブとして生体膜の動的微細構造に関する研究が以下のように計画通り進行した。 (1)心筋虚血・再潅流にともなう心筋ミトコンドリア(MT)膜の動的微細構造の変化:麻酔開胸家兎に於て冠動脈前下降枝を15分間結紮した後、15分間再潅流した。虚血再潅流部と正常潅流部位とを区分けして切り出しMTを分離採取し比較検討した。結紮しただけの虚血心筋から分離されたMTでは有意の変化はみられなかったが、虚血・再潅流により膜の脂質層の粘性は有意に増大して動的微細構築の劣化は明かであった.しかし意外なことに燐脂質分子の揺動角は全例でわずかに増大した(Jap.Heart J.印刷中)。 (2)アドリアマイシンによる心筋傷害の検討:分離したラット心筋MTにアドリアマイシンを投与すると脂質過酸化が進行するとともに、膜粘性の増大、脂質分子の揺動角の有意な減少が認められた。同時にDPHの蛍光強度が減弱しかつ蛍光寿命が著しく短縮した。DPHの蛍光は水分子の電気的分極によって消光されるので、ここでみられた減少はMT膜への水の進入によるものと解釈される。即ち、膜の動的微細構造は劣化し水の進入を抑止できない状態に陥ると見られる(Jap.J.Physiol.40:635ー649,1990)。 (3)心MTに及ぼす酸化ストレスの影響:MT浮遊液に鉄イオンとNADPH,ADPを加えると、膜粘性の増加と動的微細構造の劣化がみられた。抗酸化剤、イデベノンを添加しておくとこの反応は抑制された(Jap.Heart J.印刷中)。 (4)、(5)のセリン燐脂質の挙動については低張液に浮遊したままの赤血球膜について検討を進めている。他に連続運動がラット心MTの動的微細構造に及ぼす影響も検討することができた(Life Sceinces印刷中)。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] T.Koyama,M.ーY.Zhu,M.Kinjo,T.Araiso: "Dynamic microstructure of mitochondrial membranes from rabbit heart subjected to reperfusion after ischemia" Jap.Heart J.32. 91-100 (1991)
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[Publications] T.Koyama,M.ーY.Zhu,L.ーQ.Shong,T.Nakabayasi,W.Keatisuwan,M.Kinjo,T.Araiso: "Dynamic microstructure and hydration of peroxidized membrane of rat cardiac mitochondria and effects of adriamycin." Jap.J.Physiol.40. 635-649 (1990)
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[Publications] T.Koyama,M.ーY.Zhu,M.Kinjo,T.Araiso: "Protective effects of idebenone against alterations in dynamic microstructure induced by lipid peroxidation in rat cardiac mitochondria." Jap.Heart J.(1991)
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[Publications] W.Keatisuwan,M.Kinjo T.Koyama: "Changes in phospholipid constituents in mitochondrial membranes of rat heart after long lasting exercise." Life Sciences. (1991)
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[Publications] 朱 明晏,小山 富康: "膜蛋白の機能に及ぼす燐脂質の影響" 日本バイオレオロジ-学会誌. 4. 28-34 (1990)