1990 Fiscal Year Annual Research Report
DNAテクノロジ-による古代社会構造解析法の開発(吉野ケ里遺跡をモデルとして)
Project/Area Number |
02509001
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
植田 信太郎 東京大学, 理学部, 助教授 (20143357)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斎藤 成也 東京大学, 理学部, 助手 (30192587)
松下 孝幸 長崎大学, 医学部, 助教授 (80108282)
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Keywords | DNAテクノロジ- / 社会構造 |
Research Abstract |
本研究は、近年のDNAテクノロジ-の発展の成果を生かし、古文書・古記録等が殆ど皆無い等しい遠い古代における歴史的資料である出土人骨からDNAを抽出し、その遺伝子分析により古代社会の構成員の遺伝的関係(性別・血縁関係など)を明らかにし、古代社会構造の解析・復元システムの開発をめざすものである。研究計画の初年度にあたる本年度は、(1)長期間土の中に埋蔵されてきた生体試料である人骨からDNAを抽出し、以降の分析に適した純度にまでDNAを精製するための方法の開発、(2)かなり短い断片になってしまっているDNAしか抽出できない人骨試料をもちいて、効率よく、さらに高い解析精度でそれらの個直の遺伝子分析が可能な分析法の開発、の2点に重点をおき研究を進めた。この結果、抽出されるDNAの純度は人骨そのものが埋蔵(保存)されてきた状況に非常に依存すること、無機質である骨の保存状態と有機質であるDNAの保存状態とは基本的に相関関係はなく、むしろ逆の状況(試料)が多々みられること、通常のDNA抽出法ではDNAとともに精製されてくる蛍光性の抵分子物質が以降のDNA分析の際にもちいる酵素の阻害剤となること、などが判明した。しかし、この問題は以降におこなうDNA分析操作を繰り返すことにより克服可能であった。次に、性判別に関しては性染色体由来の復数のDNA領域が実用分析に可能であった。血縁関係に関する遺伝子分析としては、ミトコンドリアDNAをもちいた母系分析では人類集団での多様性が非常に高いDル-プ領域のうち少なくとも3ヶ所が実用に適した領域であることがあきらかとなった。現在、花浦遺跡出土人骨を重点にDNA分析をすすめているが、今後これらのDNA分析にかける吉野ケ里遺跡などの西北九州を中心とした遺跡より出土した人骨の形質人類学的特徴に関する分析ならびにそのデ-タベ-ス化が進行中である。
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