1992 Fiscal Year Annual Research Report
DNAテクノロジーによる古代社会構造解析法の開発(吉野ケ里遺跡をモデルとして)
Project/Area Number |
02509001
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
植田 信太郎 東京大学, 理学部, 助教授 (20143357)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松下 孝幸 長崎大学, 医学部, 助教授 (80108282)
|
Keywords | 古代社会 / 古人骨DNA / 個体識別 / 分子考古学 / 社会構造 / 血縁関係 |
Research Abstract |
本研究は、近年のDNAテクノロジー発展の成果を生かし、古文書・古記録等が殆ど皆無に等しい遠い古代における歴史的試料である出土人骨からDNAを抽出し、そのDNA分析により古代社会の構成員の遺伝的関係を明らかにし、古代社会構造の解析・復元システムの開発をめざすものである。前2年を含めた研究成果として、(1)長期間土の中に埋もれてきた生体試料である人骨からDNAを抽出し、以降の分析に支障のない純度までDNAを精製するための方法、(2)短い断片になってしまったDNAしか抽出できない古人骨試料を出発点としても、高い解析精度で個体識別が可能なDNA分析法、の両手法を共に確立することが出来た。そして、これらの両手法の応用として弥生ならびに古墳時代出土人骨をもちいた分析を実施し、期待通りの成果を収めた。すなわち、実用段階の試験でも成功を収め、本試験研究により開発された手法の妥当性が示された。これにより、当初の研究目的をほぼ完全に達成した。具体的には、常染色体上に存在する数塩基(2、3、および4塩基)からなる高頻度の多型を示す直列型反復配列をもちいて父系ならびに母系の両家系分析をおこない、親子関係を主体とした血縁関係の解析をおこなった。さらに、ヒトでは母系遺伝をおこなうことが知られているミトコンドリアDNAのDループ領域を指標にもちいて、母系関係の解析をおこなった。その結果、従来考古学的な状況証拠から親子であると考えられてきたある古人骨試料において、親子関係ばかりでなく母系関係をも明確に否定することができた。これは、主として考古学によって得られてきた考え(そして思考論理)を完全に覆す初めての科学的証拠である。本研究によって開発された方法はすべての古人骨試料に応用できる普遍的手法であることから、自然科学的証拠に基づいた古代社会構造の解明が今後飛躍的に進むであろう。
|
Research Products
(7 results)
-
[Publications] Kurosaki,K.: "Dinucleotide repeat polymorphism at the apolipoprotein AII locus from peripheral blood and hair." Jap.J.Legal Medicine. 46. 1-6 (1992)
-
[Publications] 松下 孝幸: "人骨から日本人のルーツを探る" 考古学ジャーナル. 348. 18-20 (1992)
-
[Publications] Kawamura,S.: "Concerted evolution of the primate immunoglobulin alpha gene through genr conversion." J.Biol.Chem.267. 7359-7367 (1992)
-
[Publications] Kawamura,S.: "Immunoglobulin Ch gene family in hominoids and its evolutionary history" Genomics. 13. 194-200 (1992)
-
[Publications] 植田 信太郎: "ヒトがきた道・探る道" 蛋白質・核酸・酵素. 37. 1507-1515 (1992)
-
[Publications] Ueda S.: "Population Paleo-Genetics" Japan Scientific Societies Press, 362 (1992)
-
[Publications] Washio: "Topics in Primatology Vol.1" University Tokyo Press, 475 (1992)