Research Abstract |
前年に引続き,形状記憶合金(SMA)によって水力機械の羽根形状を変化させる準備として,単独翼の形状を変化させることを試みた。試作翼は,基本単独翼を翼弦方向に二分割し,1/4弦長点を回転軸として前半部を回転できるようにしたものである。基本翼形状からの変形,また,その逆の過程を実現するため,互いに異なる形状を記憶させたSMA(Ni-Ti合金の線材)を組み合わせることによって,2方向性を持たせている。昨年度は回転軸周りに約9°の変形のみであったが,今年度は,回転軸周りに約9°,13°の二段階の回転変形を行なわせた。 前年度の懸案であったSMAアクチュエ-タへの長時間通電を解消するため,ロック機構の開発に取り組んだ。(1)圧電素子,(2)電磁ブレ-キ,(3)SMA,利用の三種類のロック機構が試作され,それぞれの有効性を確認した。さらに,流体機械の羽根車に無理なく搭載できるように,機構の改良も含め,小形化が計られた。 単独翼に上記のロック機構を具備したSMAアクチュエ-タを搭載し,動作確認試験により,所要の変形が実現可能であることを確認した。同時に,供試単独翼について,風洞試験が行なわれ,流れの可視化実験と後流速度分布の測定により,変形前後の流れの変化の様相が調べられた。その結果,基本翼背面で流れの剥離が起きている大きな迎え角において,翼形状の変形による流れの剥離の抑制が確認された。よって,SMAによる翼形状変化によって流れの制御が十分に可能であることが示された。今年度の試作研究によって,(1)最適な変形および制御機構,(2)SMAアクチュエ-タの羽根内への最適な組み込み方式,は確立されたと考えられる。
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