1992 Fiscal Year Annual Research Report
超音速イオンビーム装置の開発と低エネルギーイオン分子反応への応用
Project/Area Number |
02555170
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
辻 正治 九州大学, 機能物質科学研究所, 助教授 (30038608)
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Keywords | 超音速イオンビーム / イオン分子反応 / エッチング / 質量スペクトル |
Research Abstract |
当初の計画に従い、本試験研究初年度に試作した超音速イオンビーム装置を、フロンに代わるエッチングガスとして期待されるCHnCl_<4->n,CHnF_<4->nとAr^+とのイオン-分子反応の研究に適用した。生成物イオンとしてCH_3ClではCH_3 ^+(91±5%),CH_2Cl^+(9±5%)、CH_2Cl_2ではCH_2Cl^+(95±2%),CH_2Cl_2 ^+(5±2%)、CHCl_3ではCCl^+(69±3%),CHCl_2 ^+(31±3%)、CH_3FではCH_2F^+(67±3%),CHF^+(14±2%),CH_3 ^+(16±2%),CH_2 ^+(3±1%)、CH_2F_2ではCH_2F^+(91±2%),CHF_2 ^+(9±2%)、CHF_3ではCHF_2 ^+(54±3%),CF_3 ^+(46±3%)が得られた。Ar^+反応では、フランク-コンドン的に有利なイオン状態への遷移確率が大きい光イオン化法や電子衝撃法の結果とは異なり、近共鳴的な励起イオン状態への遷移確率が大きいことがわかった。本研究によりAr^+反応によるハロメタン類のイオン化が、従来の光や電子によるイオン化とは大きく異なることが初めて示された。 Ar^+/CHnCl_<4->n,CHnF_<4->n反応系の全速度定数を決定し、CH_3Clでは(1.3±0.5)X10^<-9>cm^3s^<-1>、CH_2Cl_2では(0.97±0.42)X10^<-9>cm^3s^<-1>、CHCl_3では(1.2±0.6)X10^<-9>cm^3s^<-1>、CH_3Fでは(1.7±0.6)X10^<-9>cm^3s^<-1>、CH_2F_2では(1.9±0.7)X10^<-9>cm^3s^<-1>、CHF_3では(2.0±0.6)X10^<-9>cm^3s^<-1>という値が得られた。これらの値は、LGSもしくはADO理論値の57%以上を占め、Ar^+のエネルギー近傍にイオン化のフランク-コンドン因子の大きい近共鳴状態の存在の有無に依存しなかった。従って、Ar^+反応においてフランク-コンドン因子は、従来、提唱されているほど反応を支配する重要な因子ではないことがわかった。本研究よりエッチングガスとして、CHnCl_<4->nも現在、使用されているフロンガスと同様にエッチングに活性な化学種の生成速度が速いことが明らかになった。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 辻 正治: "Dissociative Charge-Transfer Reactions of Ar^+ with CF_nC1_<4-n> at Thermal Energy" Journal of Chemical Physics. 96. 3649-3655 (1992)
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[Publications] 辻 正治: "Dissociative Charge-Transfer Reactions of Ar^+ with Chloromethanes at Thermal Energy" Chemical Physics Letters. 192. 362-367 (1992)
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[Publications] 辻 正治: "Dissociative Excitation of CF_4,CC1_4,and Chlorofluoro-methanes by Collisions with Argon and Helium Active Species" Journal of Chemical Physics. 97. 245-255 (1992)
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[Publications] 辻 正治: "Dissociative Charge-Transfer Reactions of Ar^+ with Fluoromethanes at Thermal Energy" Journal of Chemical Physics. 97. 8216-8222 (1992)
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[Publications] 辻 正治: "Dissociative Charge-Transfer Reactions of Ar^+ with Simple Apliphatic Hydrocarons at Thermal Energy" Journal of Chemical Physics. 98. 2011-2022 (1993)
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[Publications] 辻 正治: "熱エネルギー領域におけるAr^+とn-ブタン、iso-ブタンとのイオン-分子反応" 質量分析. 41. (1993)