1990 Fiscal Year Annual Research Report
弱熱耐性動物モデルとしてナキウサギ(Pika)開発の基礎研究
Project/Area Number |
02557008
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
小坂 光男 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (30079983)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松崎 哲也 国立精神, 神経センター神経研究所, 実験動物管理室々長 (30167647)
斉藤 宗雄 財団法人実験動物中央研究所, 飼育技術研究室々長 (50167417)
酒井 秋男 信州大学, 医学部, 助教授 (70020758)
松本 孝朗 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助手 (60199875)
土屋 勝彦 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教授 (90073006)
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Keywords | ナキウサギ(pika rabbit) / 弱熱耐性 / 高地・寒冷順化動物 / 高体温 / 弱熱放散能 / 温熱パンティング / 熱ショック蛋白(HSPs) / RVW / LVW |
Research Abstract |
【緒言】 生きた化石“ナキウサギ"は約6700万年前から高地一寒冷順化動物としての特性を維持している。私共は1985年以降、ナキウサギの弱熱耐性に注目し、高地・寒冷順化、弱熱耐性の実験動物モデルの確立のために、温熱生理学的手法を駆使して、体温調節・温度順化能を解析し、野外から室内飼育の過程における上記特性の詳細を究明している。 【方法】 アフガニスタン由来の室内飼育ナキウサギの体温調節能を中国青海省の野性ナキウサギのそれと比較する事によって、高地・寒冷順化能や弱熱耐性を解析するために、直腸温、体熱産生(酸素消費量)熱放散(呼吸数・皮膚温)、行動性体温調節能(巣作り)、循環機能を比較検討した。中国青海省の野生ナキウサギは中国科学院・西北高原生物研究所(西寧)の協力を得た。個体レベル研究と平行して細胞レベルにおける温熱感受性・熱耐性は10%〜SDSーPAGEによった。 【結果】 (1)アフガンナキウサギの直腸温は39.6℃(中国野生ナキウサギ:39.6-39.8℃)と高く、高い酸素消費量値20ml/kg・minや弱熱放散能【浅速呼吸の欠落や唾液分泌の減弱、耳介表面積/体温面積比(ナキウサギ7%,家ウサギ17%)】に依存している。(2)循環系の動態は高地・寒冷順化の像を呈し小型赤血球、多赤血球、低ヘマトクリット値(36%)、右心室/左心室比RVW/LVW(ナキウサギ0.25,ラット0.30)、(3)呼吸数の変動が環境温変化に追随しない点は温熱パンティングの欠落や唾液分泌量の不足と深い関係があり、暑熱ストレスによる呼吸中枢の障害が示唆される。(4)10%SDSーPAGEによる熱ショック蛋白(HSPs)誘導がナキウサギで減弱している。ナキウサギの弱熱耐性は個体レベルと細胞レベルにおけるHSPsの熱耐性機能との関連において解明する事が望まれる。 【まとめ】 室内飼育ナキウサギの平均生存日数56週は実験動物モデルの特徴を備えており、中国野生ナキウサギの導入・室内飼育が望まれる。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] Kosaka,M.et al.: "Study on the mechanism of thermal acclimatization in the pika (whistle rabbit)。" Jpn.J.Trop.Med.Hyg.19(1). 90-91 (1991)
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[Publications] Kosaka,M.et al.: "Physiological analysis of weak thermoーtolerance in pika rabbits." Jpn.J.Physiol.40. 280 (1990)
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[Publications] Kosaka,M.et al.: "Analysis of thermoregulatory responses due to thermal stimulation in the pika rabbit." Int.J.Biometeorol.34(2). 133 (1990)
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[Publications] Kosaka,M.et al.: "Physiological analysis of weak thermoーtolerance in pika rabbits." XXth International Congress of Neurovegetative Research. Abstracts. 59 (1990)
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[Publications] Matsumoto,T.et al.: "Seasonal variation of thermal sweating." Trop.Med.32(2). 73-80 (1990)
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[Publications] 小坂 光男他: "暑熱順化の中枢性・未梢性機序" 宇宙航空環境医学. 26. 108 (1990)
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[Publications] Lee,J.M.et al.: "Hyperthermic Oncology in Japan '89" Ed.by Masao Saito,Tokyo Univ.press, 316-317 (1990)
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[Publications] 小坂 光男: "飢える熱帯ー低栄養とその背景を科学するー" 小坂 光男・松本 孝朗編(第14回日本熱帯医学会九州支部大会記録集), 1-113 (1990)