1991 Fiscal Year Annual Research Report
AIDSウイルスに対する新受容体の構造・機能からの新しい原理による治療薬の開発
Project/Area Number |
02557018
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
木戸 博 徳島大学, 酵素科学研究センター, 助教授 (50144978)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池 祥雅 三井東圧化学(株), ライフサイエンス研究所, 主任研究員
唐渡 孝枝 徳島大学, 酵素科学研究センター, 助手 (60108876)
勝沼 信彦 徳島大学, 酵素科学研究センター, 教授 (50035375)
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Keywords | エイズウイルス / gp120 / トリプタ-ゼTL_2 / トリプスタチン / V3領域 / デキストラン硫酸 |
Research Abstract |
我々はCD4レセプタ-とは異なる新しいAIDSウイルスレセプタ-、Tryptase TL_2を見出しこのレセプタ-の機能を抑制することによるAIDSウイルスへの新治療薬の開発を試みてきた。これまでの研究により、人Tリンパ球の膜上に存在するTryptase TL_2はその32kDaサブユニットを介して、人免疫不全ウイルス(HIV)の外膜糖蛋白gp120のV3領域と特異的に結合することが解明された。さらにこの両者の結合はV3領域に対する抗体や、Tryptase TL_2のプロテア-ゼ作用を阻害するKunitz型インヒビタ-で阻害されることを明らかにした。平成3年度ではgp120のV3領域とTryptase TL_2との結合の様式をさらに詳細に検討した。その結果両者の結合の解離定数は、3.8×10^<-8>Mと計算され生理的に意味のある強い親和性が確認された。またこれまで検討してきた両者の結合を阻害する物質の他に、強い抗HIV活性の報告されているデキストラン硫酸の誘導体もTryptase TL_2とgp120との結合を阻害することが判明した。さらにこれらの阻害剤はHIVによるTリンパ球の膜融合も抑制した。現在これら阻害剤の中で著明な効果を示した阻害剤の一つ、トリプスタチンのDNAクロ-ニングと、その大腸菌での発現を試みている。もう1つの有望な阻害剤は、Tryptase TL_2の32kDaに対する抗体を利用したワクチン開発の可能性である。HIVはたえずその変異株を作り抗原性を変化させるが、Tryptase TL_2との結合性はよく保たれていることが確認されている。このことはHIVの変異に影響されないレセプタ-に対する抗体を作ることで、HIVの治療が可能であることを示している。現在CD4レセプタ-とは異なる新しいレセプタ-、Tryptase TL_2に対するモノクロ-ン抗体の作成と、このレセプタ-のプロテア-ゼ機能を抑制するTrypstatinを大腸菌に発現させ、大量精製するシステムの確立を急いでいる。
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[Publications] Hiroshi Kido: "Tryptase TL2 in the membrane of human T4 lymphocytes is a novel binding protein of the V3 domain of HIV-1 envelope glycoprotein gp120" FEBS Lett.286. 233-236 (1991)
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[Publications] Hiroshi Kido: "Role of serine proteases in human T4 lymphocytes in the process of HIV-1 infection" IIIrd International Symposium on Protease Inhibitor and Biological control. 36- (1991)
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[Publications] Hiroshi Kido: "A novel membrane-bound serine esterase in human T4 lymphocytes is a binding protein of envelope glycoprotein gp120 of HIV-1" Biomed.Biochem.Acta. 50. 781-789 (1991)
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[Publications] 木戸 博: "HIV-1レセプタ-" Immunology Frontier. 4. 18-28 (1991)
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[Publications] 木戸 博: "ウイルス感染における宿主細胞プロテア-ゼの役割" Cell Science. 7. 48-58 (1991)
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[Publications] 勝沼 信彦: "Tリンパ球膜の新セリンプロテア-ゼ-AIDSウイルス受容体の可能性-" 実験医学. 9. 98-101 (1991)
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[Publications] 木戸 博: "エイズウイルス感染と細胞内プロテア-ゼ" BIOmedica. (1992)
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[Publications] Hiroshi Kido: "A novel membrane-bound serine esterase in human T4^+-lymphocytes immunologically reactive with antibody inhibiting syncytia induced by HIV-1" J.Biol.Chem.265. 21979-21985 (1990)
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[Publications] Nobuhiko Katunuma: "Recent advance in research on tryptases and endogenous tryptase inhibitors" Monographs in Allergy. 27. 51-66 (1990)
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[Publications] Nobuhiko Katunuma: "New biological functions of intracellular proteases and their endogenous inhibitors as bioreactant" Advances in Enzyme Regulation. 30. 377-392 (1990)
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[Publications] 勝沼 信彦: "新しいbioreactantとしての細胞性セリンプロテア-ゼと内在性インヒビタ-" 生化学. 62. 18-31 (1990)
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[Publications] Toshio Hattori: "Involvement of tryptase-related cellular protease(s) in human immunodeficiency virus type 1 infection" FEBS Lett.248. 48-52 (1989)