1990 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトロタウイルス実験感染マウスによる受動免疫と治療法の開発
Project/Area Number |
02557024
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
海老名 卓三郎 東北大学, 医学部, 助教授 (60004678)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 武彦 太陽化学(株), 総合研究所, 所長
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Keywords | ロタウイルス / 乳幼児下痢症 / 受動免疫 / 卵黄免疫グロブリン / 担子菌製剤 / 抗ウイルス剤 / BRM / BALB / c マウス |
Research Abstract |
ヒトロタウイルス(HRV)は乳幼児下痢症の病原ウイルスであり、HRV下痢症の制圧は世界的急務である。そこでその予防並びに治療の研究が進められているが、ヒトロタウイルスの感染・発症機構に不明な点が多く、動物感染モデルの作成が必要であった。我々は当教室で分離したHRV・MO株(血清型3)を生後5日のBALB/cマウスに10^6FCFU(蛍光抗体陽性フォ-カス単位)経口感染させたところ24時間後より3日間90.5%(67/74)のマウスで典型的な下痢を発症させることに成功した。この時小腸上皮細胞にHRV抗原が検出され、上皮細胞微絨毛の消失、細胞質内空胞、間質浮腫の病理所見が観察された。この実験感染モデルを使って受動免疫による予防と抗ウイルス剤を使った治療実験を行い以下の結果を得た。 1.抗HRV卵黄抗体(IgY)による下痢発症予防 産卵鶏にMO株を免疫して得た抗MO卵黄IgY、またはWa株(血清型1)を免疫して得た抗WaIgYを50μ1,MO感染1時間前に経口投与したところ用量依存的に下痢発症を予防した。特に抗MO・IgYでは22.5μgの投与で47匹全て下痢を認めなかった。抗Wa・IgYでは250μgの投与により完全予防し血清型特異性が認められた。この時腸管組織に病理変化もウイルス抗原も認めなかった。一方対照非免疫IgYでは全例下痢が発症した。 2.担子菌製剤PSKによる下痢発症治療 担子菌製剤PSKはβーDーグルカンを主成分とする蛋白結合性多糖体であり、in vitroでHRVの感染性を減弱させていることを見出した。そこでマウス当り2.5mgをHRV感染12時間後に経口投与したところ、感染2日後に11匹中10匹で下痢が完全治癒しており、用量依存的な治療効果が認められ、腸管組織の病理変化も回復していた。
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