Research Abstract |
(1)アトピ-性皮膚炎の患者では正常とみえる非病変部の皮膚が乾燥しており,アトピ-性乾皮症(atopic zerosis)と呼ばれる。この部位を組織学的に検索すると軽い炎症性変化を皮膚の上層に認める。角層の経表皮水分喪失量は上昇し,そのバリア-機能の低下が明らかとなった。一方,高周波伝導度,角層表層の水溶性アミノ酸含有量も低下しており皮表の乾燥を裏付ける変化がみられた。また角層表面を200倍の拡大のもとに観察すると,正常皮膚に比し,大きな角層細胞の集塊か落屑しかかって存在することが確かめられた。角層,層数全体は,正常の前腕屈側で14層とすると,アトピ-性乾皮症では21層と厚く,一方その置き換わりに要する期間(turrover time)は正常が14日であるのに7日と短縮しており,計算上からも,正常では1日1層の円層が剥離するのに対し,アトピ-性乾皮症では1日3層,角層が剥離していることになる。すなわち,表皮が軽い炎症の影響により増殖が盛んとなり,不十分な分化のままに角化し,その結果,バリア-機能,水分保持機能も低く,また大きな集塊をなして角層が剥離するために,臨床的に乾燥して感じられるようになることが明らかになった。 (2)正常角層シ-トを用い,湿った濾紙を覆って作製した生体角層シミュレイションモデルに,ワセリン,親水軟膏,尿素クリ-ムを塗布し,乾燥あるいは湿った環境において,外用剤がその下の角層の水分含有状態にどのような影響を与えるのかを検索した。その結果,とくに油脂性製剤は密封効果も高く,水分の角層と環境の間での移動を抑えるような働きをすること,したがって高湿度下では,むしろ角層内水分含有量が低くなる傾向がある一方,低湿度下ではそれが高くでる傾向があることが確かめられた。
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