Research Abstract |
今年度は,合成ハイドロキシアパタイト熱分解産物(アパタイトセメント)の骨セメントとしての応用,可能性を探るために,前年度に引き続き,長期毒性実験を行い,また,閉経後骨粗鬆症モデルとして卵巣摘出後の動物骨髄内における組織反応について実験を施行した。 1,毒性試験について 体重2-2.5kg日本白色種家兎18羽を,高容量(3g)埋入群,低容量(1g)埋入群,手術のみ群の3群に分け,大腿骨骨髄内にアパタイトセメントを埋入,埋入後26週,52週で血液・生化学検査を施行し,慢性の毒性及び主要臓器,埋入周囲組織との反応を検討した。埋入後,白血球の軽度増加および軽度の炎症反応を認めたものの,組織学的に明らかな炎症所見はなかった。また,屠殺後,主要臓器に関しては,炎症所見および異常所見は認めず,アパタイトセメントを比較的長期に埋入した後の毒性も,前年度に報告した埋入後短期の毒性と同様,低いと考察された。 2,卵巣摘出後の動物骨髄内における組織反応 8週齢ウィスター系雌ラット36匹中,24匹に両側卵巣摘出術を施行し,閉経後骨粗鬆症モデルを作成,9ヵ月後に右大腿骨内にアパタイトセメントを埋入した。対照には残り12匹を使い,同様にアパタイトセメントを埋入した。術後4,8,12週で屠殺し,アパタイトセメント周囲に接した新生骨の面積を計測し,経時的変化を検討した。その結果,新生骨は,術後4週から対照群で認められるのに比し,卵巣摘出群では8週と遅かった。しかし,いずれの群も経時的に新生骨面積は漸増し,術後12週で対照群が0.394mm^2,卵巣摘出群が0.207mm^2となり,アパタイトセメントは閉経後骨粗鬆症モデルにおいても,骨伝導能を有し,自己硬化型生体材料(いわゆる骨セメント)として十分有用であると考察された
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