1991 Fiscal Year Annual Research Report
脳内皮細胞レセプタ-を利用したドラッグデリバリ-システムの開発:生理学的薬物速度論に基づくアプロ-チ
Project/Area Number |
02557088
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Research Institution | University of Tokyo |
Principal Investigator |
杉山 雄一 東京大学, 薬学部, 教授 (80090471)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹原 邦宏 三共株式会社, 生産技術研究所, 主任研究員
鈴木 洋史 東京大学, 薬学部, 助手 (80206523)
澤田 康文 東京大学, 医学部, 助教授 (80114502)
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Keywords | 血液-脳関門 / 血液-脳脊髄液関門 / β-ラクタム抗生物質 / 薬物速度論 |
Research Abstract |
水溶性薬物のモデル化合物としてβ-lactam抗生物質を選び、その中枢内分布の速度論解析を行った。なお、抗生物質に対するレセプタ-(輸送蛋白)が、血液脳関門、および血液脳脊髄液関門に存在することが示唆されているため、本研究のモデル化合物として用いた。中枢神経系は、(1)血液脳関門により血液と脳細胞外液の間の物質移行が制限される、(2)脳細胞外液と脳脊髄液の間には自由な物質移行が観察される、(3)脳細胞外液中ではFickの法則に従った拡散が生じる、(4)脳脊髄液中の物質は、脳脊髄液のbulk flowおよび脈絡叢における特殊輸送系により、血液へとくみ出される、という特徴を有しており、上述の各速度論過程を含む生理学的薬物速度論モデルを構築した。さらに、各過程に対応する方程式を記述し、ラプラス変換解を求めた。この解に実測値を当てはめ計算することにより、モデルの妥当性について検討を加えた。実測値としては、(1)静脈内投与後の抗生物質の脳細胞外液中濃度、脳脊髄液中濃度、(2)脳室内投与後の抗生物質の脳脊髄液中濃度である。計算の結果、良好なあてはめ曲線が得られ、また、計算されたパラメ-タの値が、生理解剖学的に妥当であったことから、本モデルの正当性が確証された。併せて、本モデルに基づき、静脈内投与後の脳脊髄液移行性の異なる種々の抗生物質の中枢分布を解析したところ、抗生物質の中枢移行は、(1)血液脳関門透過性、(2)脈絡叢輸送系、(3)拡散定数という、薬物固有のパラメ-タ値、および(1)脳脊髄液の容積、(2)脳脊髄液の産生速度、(3)脳室上衣の表面積という生理解剖学的パラメ-タの値を考慮することにより、正確に予測しうることが示された。 更に、本モデルに基づき、simulation studyを行ったところ、血液脳脊髄液関門を介した血液から脳脊髄液へのfluxが存在する場合、存在しない場合に比べて、中枢内濃度が上昇する様子が定量的に示され、薬物の中枢デリバリ-を考える上での、血液脳脊髄液関門を介したル-トの有用性が示唆された。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 杉山 雄一,鈴木 洋史 (中嶋,永井編): "脳中薬剤" 医薬品の開発第17巻,薬物の分析法,広川書店. 177-204 (1991)
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[Publications] H.Matsushita et al.: "Facilitated transport of cefodizime into the rat central nervous system." J.Pharmacol.Exp.Ther.259. 620-625 (1991)
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[Publications] H.Matsushita et al.: "Effect of benzylpenicillin on the disposition of cefodizime in rats: No net effect on total clearance due to decreased hepatobiliary cleavance and increased renal clearance." J.Pharmacol.Exp.Ther.260. (1992)