1990 Fiscal Year Annual Research Report
酸素ストレスによる臓器障害:特徴的膜脂質分解反応の解析と新規治療薬開発への模索
Project/Area Number |
02557090
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
工藤 一郎 東京大学, 薬学部, 助教授 (30134612)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高村 忠仲 エーザイ株式会社, 研究開発部, 室長
浜野 裕之 エーザイ株式会社, 研究開発部, 室長
新井 洋由 東京大学, 薬学部, 助手 (40167987)
梅田 真郷 東京大学, 薬学部, 助手 (10185069)
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Keywords | 虚血心筋 / 肝臓障害 / 酸素ストレス / ホスホリパ-ゼA_2 / 臨界ミセル濃度 |
Research Abstract |
(1)心筋虚血にともなって、異常な脂質代謝が進行することが古くから知られている。我々は、ラットの冠状動脈前下行支を結紮して誘導した虚血心筋部位のホモジェネ-トを、試験管内で37度でインキュベ-トすると、内在性のホスファチジルエタノ-ルアミンが特異的に加水分解されることを見いだした。正常心筋のホモジェネ-トでは、この反応は全く観察されなかった。生じるリゾPEの脂肪酸組成を調べることによって、本反応がホスホリパ-ゼA2の活性化によることを明らかにした。しかし、放射標識した基質を用いて、ホモジェネ-ト中の酵素活性を測定した場合には、有為な変動は観察されなかった。この内在性の基質のみを加水分解する活性は、比較的低濃度のカルシウムイオンを必要とすることがわかった。ホスホリパ-ゼA2の回定をすべく、各種阻害剤の効果を調べた。その結果、14kDaグル-プII型酵素の特異的抗体及び阻害剤が非常に効率よく本反応を阻害することがわかった。(2)四塩化炭素をラットに投与して誘導した肝障害モデルでも、同様の内在性ホスファチジルエタノルアミンの加水分解が亢進していた。この反応も、14kDaグル-プII型ホスホリパ-ゼA2特異的な阻害剤で抑制された。処理した肝臓からは対照に比べて、多量のホスホリパ-ゼA2が1MKClで可溶化されてきた。さらに、処理肝臓から抽出したリン脂質画分には、ホスホリパ-ゼA2活性を促進する因子が含まれていることが示唆された。(3)ラット14kDaグル-プII型ホスホリパ-ゼA2は、従来から知られている膵臓由来酵素と異なり、臨界ミセル濃度以下の濃度で存在する基質をも効率よく加水分解することを見いだした。さらに、非代謝性の基質アナログを共存させると、著しく活性化され、2分子構造を形成することがわかった。この特徴的活性化反応を、酸素ストレスにカップルしたリン脂質代謝と関連すべく解析している。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 菊池 玲: "ラット虚血心筋における膜リン脂質の異常崩壊"
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[Publications] 笠 明美: "四塩化炭素誘導ラット肝障害における膜リン脂質の異常崩壊"
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[Publications] 高橋 勝彦: "高等動物14キロダルトンII型ホスホリパ-ゼA_2の活性化機構"