1990 Fiscal Year Annual Research Report
セロトニン受容体(S3)アンタゴニストによる抗癌剤の悪心・嘔吐を抑制する機構の解明
Project/Area Number |
02557100
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
伊藤 漸 群馬大学, 内分泌研究所・比較内分泌部門, 教授 (00008294)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新島 旭 新潟大学, 医学部・生理学教室, 名誉教授
竹内 利行 群馬大学, 内分泌研究所・化学構造部門, 教授 (00109977)
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Keywords | シスプラチン / セロトニン受容体 / セロトニン受容体アンタゴニスト |
Research Abstract |
近年癌治療に頻用されている化学療法剤シスプラチンは、その強い悪心・嘔吐作用が治療上の障害として問題となっていたが、最近セロトニン受容体(HT_3R)アンタゴニストがその防止薬として有効であることが示された。シスプラチンは腹腔や消化管に蓄積する傾向があり、その細胞毒作用によって小腸粘膜中のクロマフィン細胞からセロトニンが放出され、迷走神経や腸間神経の求心線維末端のHT_3Rを刺激し、それが悪心・嘔吐誘引中枢Area Postrema(第4脳室下方、菱形窩に位置する)に伝わり、悪心として感知され、嘔吐反射をひきおこすと考えられている。HT_3Rは腸間神経末端やArea Postremaに局在しているが、HT_3Rアンタゴニストを治療薬として用いる場合は、HT_3受容体情報伝達系が消化管運動に対してどのような働きをしているのか十分に理解しておく必要がある。我々は、微小トランスデュ-サ-を一定間隔で胃から下部腸管にかけて埋め込んだ犬を用い、食物摂取時、食後消化時、空腹時にわたって連続的に消化管運動を記録できるシステムを確立した。空腹時腸管では胃から下部腸管にかけて、約100分間隔で周期的に強収縮波が生じるが、これは血中モチリンの上昇がトリガ-となってひきおこされることが分かっている。胃に生ずる空腹時強収縮波出現時に、HT_3Rアンタゴニスト(ICS205ー930,BRL43694,又はGR38032F)を静注すると、強収縮波の消失を見る。この収縮波はモチリンを静注することによってもひきおこすことができるが、HT_3Rアンタゴニストを同時投与すると収縮波は消失する。しかしながら迷走神経を切断した胃(ハイデンハイムポ-チ)では強収縮波の消失は見られない。即ちHT_3Rアンタゴニストが有効に作用するためには迷走神経上行性のインパルスを必要としていることを意味する。今後はHT_3受容体情報伝達系にはどのような中枢性制御が関わっているか明らかにしていく予定である。
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[Publications] T.Satoh,N.Inatomi,H.satoh,S.Marui,Z.Itoh,S.Ohmura: "EMー523,an Erythromycin Derivative,and Motilin Show Similar Contractile Activity in Isolated rabbit Intestine" The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics. 254. 940-944 (1990)
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[Publications] N.Yoshida,A.Mizumoto,Y.Iwanaga,Z.Itoh: "Effects of 5ーHydroxyptamine 3 Receptor Antagonists on Gastrointestinal Motor Activity in Conscious dogs" The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics. 256. 272-278 (1991)
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[Publications] Z.Itoh,A.Mizumoto,Y.Iwanaga,N.Yoshida,K.Torii,K.Wakabyashi: "Involvement of 5ーHydroxytryptamine 3 Receptors in Regulation of Interdigestive Gastric Contractions by Motilin in the Dog" Gastroenterology. (1991)
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[Publications] Z.Itoh: "Factors regulating gastrointestinal motilityーan overview of current knowledge on gastroprokinetics (in Gastrointestinal Function,Regulation and Disturbances,Vol.8)" Excepta Medica,Ltd,Tokyo, 16 (1990)