1991 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト血小板からの軟骨・骨細胞増殖因子の精製とその性質
Project/Area Number |
02558019
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
加藤 幸夫 広島大学, 歯学部, 教授 (10112062)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅田 彬 大阪大学, 歯学部, 講師 (50028734)
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Keywords | 軟骨細胞 / 血小板 / 成長因子 / プロテオグリカン合成 / DNA合成 |
Research Abstract |
骨折部位では、未分化間葉系細胞から分化した軟骨細胞は、増殖・基質合成・肥大化および石灰化の一連の細胞変化を経たのち、新生骨におきかわって骨が修復する。骨折部では出血ののち血餅ができるが血餅を除くと骨折の治療が遅れることが観察されている。したがって、血小板に軟骨・骨形成因子が存在すると推察される。本年度は、ヒト血小板の酸抽出物より軟骨細胞のDNA合成を促進する分子量10000-12000の成長因子およびプロテオグリカン合成を促進する分子量28000たんぱく質を精製した。DNA合成促進因子は、軟骨細胞以外にウサギ繊維芽細胞およびnormal rat kidney細胞の増殖をも促進した。またTGF-betaとは異なり、本因子はラット肝細胞のDNA合成を抑制しなかった。しかしこの因子はアミノ末端がブロックされておりアミノ酸配列の決定には至っていない。一方、28000-29000のソマトメヂン様活性を示した因子は、同様な分子量のPlatelet-derived growth factor(PDGF)およびTGF-betaとは血管内皮細胞および軟骨細胞培養系での生物学的性質が異なっていた。しかし依然としてその精製が困難であり、これは物質としての安定性および含量がとぼしいためであると考えられる。いずれにせよ、これらの血小板因子は、軟寒天内の軟骨細胞培養系のほか軟骨の器官培養系でもDNA合成を促進したので、骨折などの骨・軟骨の修復に有用であることが強く示唆された。
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[Publications] 加藤 幸夫: "軟骨細胞におけるcyclic AMPの役割" 組織培養. 174. 116-119 (1991)
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[Publications] 加藤 幸夫: "組織修復と感染における繊維芽細胞増殖因子(FGF)の役割" 感染・炎症・免疫. 213. 157-163 (1991)
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[Publications] 加藤 幸夫: "生体材料としての成長因子と細胞外基質" 生体材料. 94. 193-199 (1991)
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[Publications] 島津 篤: "軟骨細胞培養系における副甲状腺ホルモンによるインスリン様成長因子の産生促進" 日本骨代謝学会雑誌. 91. 37-42 (1991)
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[Publications] 加藤 幸夫: "軟骨形成促進因子としてのFGF" 実験医学. 101. 60-66 (1992)
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[Publications] Shimazu,A.: "Effects of hyaluronic acid on the release of proteoglycan from the cell layer of rabbit chondrocytes in culture." Seminars in arthritis. (1992)
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[Publications] Eds,Drs,A.D.Dixon: "Fundamentals of bone growth." CRC Press, (1991)
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[Publications] 加藤 幸夫: "細胞とバイオサイエンス" 朝倉書店, (1991)