1990 Fiscal Year Annual Research Report
唯識思想形成史の基礎的研究(『瑜伽師地論』の成立とその背景の解明を通じて)
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02610014
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Research Institution | Hokkaido Musashi Women's Junior College |
Principal Investigator |
向井 亮 北海道武蔵女子短期大学, 教授 (70002194)
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Keywords | 瑜伽師地論 / 雑阿含経 / マハ-・ス-トラ / 成唯識論 / ア-ラヤ識 |
Research Abstract |
本年度の研究においては,およそ次のような成果を得ることができた。 1.唯識思想形成史における『瑜伽師地論』撰述問題の課題性を、最近の代表的な研究であるハンブルク大学シュミットハウゼン教授の『ア-ラヤ識ーその起源と初期の展開ー』(L.Schmithausen,A^^ーlaya=vijn^^〜a^^ーnaーOn the Origin and the Early Development of a Central Contral Comcept of Yoga^^ーca^^ーra Philosophyー,Tokyo 1987)における立場・方法・視点を検討しながら、考察して、本研究の方向と問題点を確認した。 2.『瑜伽師地論』の全体的な内容構成を、伝統的な科文の方法も参照しながら、分析して、サンスクリット刊本・チベット語訳本をも対照した新しい科段分け(synopsis)を用意した。 3.『瑜伽師地論』所引の阿含経典や所依の文献の検索・査定を進め、〈雑阿含経〉と、いわゆる「大経」(maha^^ーsu^^ーtra)の重要性を確認した。また、併せて、当『瑜伽師地論』に続く瑜伽行唯識学派の文献の中で当『論』を最も多く依用する『成唯識論』に当たり、その引用・依用のあり方を調査し、従来より指摘されてきた箇所151について検討を加え、また、直接的な引用ないし依用以外でも、『論』の所説を前提ないし背景としている箇所について検索を進めた。 以上、1〜3の作業より得られた新しい知見や新しい視点は、継続される本研究の次年度の研究(それは、主に「思想史的展開の考察」が中心となるが)の中で、集約・整理されて発表されるであろう。
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