1990 Fiscal Year Annual Research Report
伝承儀礼としての「柱松」行事に関する調査及び比較研究
Project/Area Number |
02610017
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Research Institution | Aichi Gakuin University,Junior College |
Principal Investigator |
佐藤 悦成 愛知学院短期大学, 文科, 助教授 (30167431)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
成河 峰雄 愛知学院短期大学, 文科, 助教授 (60167559)
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Keywords | 柱松 / 伝承儀礼 / 仏教 / 神道 / 浄化 / 救済 |
Research Abstract |
平成二年度は、京都府・福井県・和歌山県・滋賀県・長野県における「柱松」儀礼の実態を調査したが、その結果、当該行事に内在する問題点を明確になすことができた。現地調査により収集した資料を元に考察した結果、当該儀礼において祖霊は勿論のこと、牛馬・土中の昆虫をも供養して救済し、その上で年穀の実りを祈る宗教儀礼であったことが明かとなった。この視点は、再生を願う神道の他界思想には見られず、自然と自己を共存させる仏教思想が強く影響していることによる。それは、神道儀礼という従来の固定した視点に対して、仏教における救済の思想が儀礼の基盤にあることを、霊の浄化と救済を関連させて考究せねばならないことを示している。 この視点は従来の研究にはなく、上記の事例を調査した結果であり、「柱松」行事の研究に新たな視点を提示する成果を得たといえる。「柱松」行事は関東以西に点在する宗教行事であるが、しかし、狭い特定地域に限定された儀礼ではない。ところが従来は特異な儀礼と見なす傾向が強く、この奇祭が広い地域で伝承されている点についての明確な原因の究明はなされて来なかった。その意味で、「浄化と救済の対話」という当該儀礼の分析は、現地調査から得られた新たな視点といえ、当研究の目的は順調に達成されつつあるといえる。 本研究調査では固定化した観点を離れ、全国三十ヶ所に及ぶ「柱松」行事各々について調査を実施せんとするものであるが、現在のところその三分の一程度を終えたに過ぎない。今後は、より多くの事例を現地調査し、解明すべき点の把捉に正確を期すものである。 また、時代を区分しての文献資料と、収集した現在の資料との対比検討が次の研究段階となると考えている。
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