1990 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02610026
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
勝 國興 同志社大学, 文学部, 教授 (80066208)
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Keywords | 国際ゴシック様式 / 宮延様式 / 柔軟様式 / ボヘミア / ブルゴ-ニュ / ラインラット / パリ / ルネッサンス |
Research Abstract |
ヨ-ロッパの中世のゴシック美術とルネッサンス美術との間を断絶したものと見るか、とぎれることのない連続と解するかは、歴史学上の大きな問題である。連続する要因を重視するのが現今の一般的見方ではあるが、それにもかかわらず、ゴシック的世界とルネッサンス的世界は、明らかに区別されるべき二つの異なった文化を生み出した。美術史の分野では、この二つの異なった世界の間に「国際ゴシック」International Gothicといわれる中間項があって、中世ゴシック美術はこの国際ゴシックを経由して、ルネッサンス美術へと接続していく。したがって、中世美術が終わってルネッサンス美術が始まるのではなく、前者は国際ゴシック美術を通してルネッサンスへ伝えられて行くものと、またそこで消えてしまうものがある。 この国際ゴシック様式の美術の実態を明らかにしてみたいというのが、この研究の究極の目的である。その各称のとうり、この美術はヨ-ロッパにおける国際的現象であり、これを究めるには当時のヨ-ロッパ各地の美術状況を明らかにしなければならない。差し当たっては、ドイツの場合を取り上げることにした。ドイツで「柔軟様式」weicher Stilと呼ばれるこの様式は、ボヘミアとラインラント地方が中心となって成立し、その他の地方へ伝播した。それは、汎ヨ-ロッパ的枠としては、ネ-デルラントとブルゴ-ニュと北イタリアとの交流のなかで発展し、神聖ロ-マ帝国の枠内では、ライン川からシュレジエン、チロルからバルト海にわたる広い範囲で展開した。なかでも1410ー20年、マインツで成立したと推測される「オルテンベルク祭壇画」は、ライン川中流域での柔軟様式の展開に、きわめて重要な意味を持つ作品であることが分かった。今後、その成立の背景を明らかにすることで、ドイツにおける国際ゴシック様式の生成の一端を究めたいと思う。
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