1992 Fiscal Year Annual Research Report
日常生活経験を通じて獲得される「生物学」と学校で学ぶ生物学との相互作用
Project/Area Number |
02610036
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
稲垣 佳世子 千葉大学, 教育学部, 教授 (90090290)
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Keywords | 日常的生物学 / 擬人的説明 / 植物栽培 / 動物飼育 |
Research Abstract |
〈実験1〉学校での生物学(いわゆる科学的生物学)と日常生活経験を通じて獲得される「生物学」との相互作用を見るために、幼稚園や小学校の生活科でよくみられる植物栽培や動物飼育の場面で、幼稚園の教師や小学校低学年の教師がしばしば用いる、植物を過度に擬人化した説明が子どもの生物学的理解に及ぼす効果を検討した。具体的には、幼稚園年中組(4歳児)の幼児に紙芝居形式で、キンセンカの栽培の手続きを教える際、植物を人間化し、植物が感情を持ったり話をしたりする形での説明をする場合と、栽培手続きを事実に即して述べる形での説明を与える場合を設定し、この説明の理解の程度を比較した。その結果、擬人的説明を与えることは、少なくとも4歳の幼児においては、生物学的理解を抑制する時も、逆に促す時もあることが示された。初めに予測したように、植物の種に人間のようにしゃべらせる形を取った説明が即、過度の擬人化であり、子どもをファンタジーの世界に誘い、現実生活で必要な生物学的知識を学びにくくする、と単純にいうことはできない。重要なことは、植物と人間との間の適切なマッピングができているかどうかであることが示唆された。 〈実験2〉動物の飼育場面における大人の与える説明として、子どもの持つ「日常的生物学」での推論を引き出すようなものは、子どもの生物学的理解を促進するといえるかを検討した。幼稚園の年中組(5歳児)と年長組(6歳児)の子どもを用いて、リスの飼育の仕方を紙芝居を使って説明するという場面において、ヒントとして人間との対比を示唆する記述(○○ちゃんだったら〜だけど、リスどうかな?)を付加した説明を与える群と、そうした記述のない説明を与える群における生物学的理解を比較した。その結果、人間との対比を示唆する説明を与えられた群の方が、飼育の手続きやその意味の理解がすぐれていることが見いだされた。
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