Research Abstract |
人間が,外界の種々の情報を同時的あるいは継時的に処理をしていくとき,人間の内部的調整機構としての注意資源が,各情報処理事態に配分されると考えられる。本研究においては,被験者が,種々の情報を速やかに処理していく課題が与えられた場合,各情報に対する注意資源の配分様態が変容したとしても,配分されている注意資源の総量は一定であるか否かについて,反応時間を指標として検証を行った。 実験1と2の結果から次のようなことが判明した。視野の方向によって標的文字の提示率が均等であると,処理すべき空間的方向が増すほど各方向に配分される注意の密度は減少する。また,視野の方向によって文字の提示率を変え,注意の配分様態を変容させると,提示率が高い方向の注意配分密度は,方向によって提示率が均等である場合と比較して高く,提示率が低い方向の配分密度はそれよりも減少する。 実験3および4においては,文字の同定判断過程においても,視野内への注意資源配分と同様な現象が見られるか否かについて検証した。個々の文字の提示率が等しい場合には,被験者が処理をしなければならない文字数が増すと,各文字に対して配分される注意の密度は減少する。また,ある文字の提示率を他の文字より高めると,その文字に対する注意の配分密度は,各文字の提示率が等しい場合と比較して高まるが,他の文字に対する配分量はそれよりも減少する。 また,実験1と2,および実験3と4それぞれにおいて,注意配分様態の変容を多元的に表して,条件間で比較した結果,注意配分の様態が変容しても,配分された注意資源の総量は恒常となることが示された。 これらの結果から,視野内の各方向への注意配分,各文字への注意配分いずれにおいても,個々の情報処理過程に配分される注意資源の総量は一定で,その量には一つの限界があることが示された。
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