1992 Fiscal Year Annual Research Report
危機事態における大集団避難と集団内葛藤に関する実験的研究
Project/Area Number |
02610060
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
釘原 直樹 九州工業大学, 工学部, 助教授 (60153269)
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Keywords | 避難行動 / 隘路状況 / 混雑 / パニック / 緊急事態 / 脱出 / 集団 |
Research Abstract |
狭い出口に多数の人々が殺到するという隘路状況では集団のサイズに比例する形で脱出許容時間を延長しても脱出成功率は一定とならない。その第1の理由は、1人ずつしか脱出できない場合、自分が最初に脱出する事に固執する人が2人以上集団の中に存在した場合には、それらの人が長く出口で競合を続けるためにその間他の人達も脱出できないためである。集団サイズが大きくなれば利己的な人が含まれる確率も高くなる。 第2の理由として社会的促進のために個人の活動レベルが上昇することが考えられる。大集団の脱出成功率の低下はこのいずれかのためであろう。 そこで集団のサイズに比例する形で出口の数を増加した場合には、第1の理由による脱出成功率の低下は生じないと考えられる。何故なら利己的な少数の人が含まれる確率は大集団の場合には高くなるが、それに伴って出口の数も増加するからである。本実験の第2の目的は攻撃手段の有無が脱出成功率や混雑に与える影響を吟味することであった。 実験の結果、集団の大きさが増大すれば、それから有攻撃手段の場合が無攻撃手段よりも脱出所要時間が長くなることが明らかになった。集団サイズと攻撃手段の有無との間に交互作用効果も見いだされた。また1人当たりの活動量(脱出ボタンの打叩回数)も大きい集団の方が大きくなった。以上の実験結果から示唆されることは、1)集団サイズと比例した形で出口の数を変動させても脱出所要時間が一定とはならない、2)大集団の場合の脱出所要時間の増大は少数の利己的な人の存在確率の上昇だけでは説明できない、3)大集団の方が1人当たりの活動量が大になる、4)集団成員全員が攻撃手段を有することは集団の状態を悪くする、5)この効果は特にサイズが大の集団で顕著になること等である。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Naoki Kugihara: "Collective Behavior in an Emergency:Escaping from a Human Maze." The Japanese Journal of Experimental Social Psychology. 31. 246-255 (1992)
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[Publications] 釘原 直樹: "迷路からの集団脱出と単独脱出に及ぼす恐怖の効果" 心理学研究. 63. 23-29 (1992)