1991 Fiscal Year Annual Research Report
現代社会における貧困の世代的再生産と教育との関連に関する研究ー貧困のスティグマの付与における学校教育の媒介性ー
Project/Area Number |
02610086
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
高口 明久 鳥取大学, 教育学部, 助教授 (50127453)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
生田 周二 鳥取大学, 教育学部, 講師 (00212746)
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Keywords | 児童福祉 / 教育福祉 / 進路指導 / 進路補償 / 貧困 / 要養護児童 / 児童福祉施設 / アフタ-・ケア |
Research Abstract |
現代における貧困の再生産に学校教育がいかに関わっているのかを明らかにする目的で、我々は要養護児童に着目し、内外の文献研究と3本の実地調査を行った。 文献研究では、英・米・独における貧困児童の研究・政策・実践の歴史的且つ現代的展開をあとづけ得た。それらの諸国では19世紀末〜20世紀初めの政策確立期、20世紀半ばの脱施設化期を経て、1960年代以降新たな貧困再生産の発見と社会政策をめぐる議論の展開があった。日本では研究も政策も量的・質的に遅れている現状である。 調査は養護児童の進路形成過程を中心に(1)養護施設調査票調査(2)養護児童調査票調査(3)養護施設面接調査を実施した。 (1)では、養護児童の進路を規定する諸要因の内、低学力要因、進路指導の在り方、地域性、施設側の態度要因、学校測の態度要因等が強い関連を示している事が分かった。とりわけ地域によって大きな進学率の差がみられた。この結果は、児童福祉の重要な一部分としての教育の達成水準に地域的に格差が現にある事を示しており重要である。 (2)では、個別の児童の進路形成過程を追求した結果、児童の学力がアンダ-・アチ-ブメントである事、やはり地域性による要因が大きい事、そして施設ー学校の複雑な関連に規定されている事が分かった。また、数量化3類による総合的な分析結果として、児童の性行、学業成績、早期自立可能性の3軸を析出し得た。これらによって児童の処遇の適否の指針を得る事が出来る。と共に、児童養護の児童にとって最適な、児童養護環境、処遇の在り方を求める事が重要な課題として残った。 (3)では、統計調査では十分に明かではない諸点について面接調査によって、園長の主観的意味付与過程も含めて明らかにしようとした。その結果園運営の理念、園生活の組織、学習・進路指導、アフタ-・ケアと職員の問題等に関して、新たに興味深い知見を得た。児童にとって施設ー学校空間の統合された文化の在り方が問題である事が分かった。 これらの諸結果は、要養護児童の処遇の理念・実態・成果・課題を明らかにするもであると共に、現代に於ける貧困と教育研究の課題と、児童福祉・教育政策への提起をも含むものであった。中でも養護児童にとってより個別化された人間的環境とより文化的に濃密な養育環境を保証する事、及び、幼年期からの生活の中での教育的働きかけと、保障的な教育の機会を少なくとも18歳〜20歳前後まで確保する事が重要である事が分かった。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 高口 明久,生田 周二: "養護施設入所児童の学業達成と中卒後の進路に関する研究ー中国・近畿の養護施設を対象とする調査表調査の分析ー" 鳥取大学教育学部研究報告(教育科学). 33 1号. 105-260 (1991)
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[Publications] 高口 明久,生田 周二: "養護児童の進路形成ー家族的背景、施設・学校生活及び学校卒業後の生活との関連" 鳥取大学教育学部研究報告(教育科学). 33 2号. 354-453 (1991)
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[Publications] 高口 明久,生田 周二: "養護施設と児童ー9つの施設に対するインタ-ビュウ調査結果から" 教育実践研究指導センタ-研究年報. 1. (1992)
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[Publications] 高口 明久: "養護施設調査から見た家庭崩壊・子ども・家校" 「教育」. No.545. 57-68 (1992)