1991 Fiscal Year Annual Research Report
戦後日本社会の構造変動と集団就職に関する社会学的研究
Project/Area Number |
02610091
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
高田 滋 東京学芸大学, 教育学部第二部, 助教授 (50137478)
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Keywords | 社会構造変動 / 人口移動 / ライフコ-ス / 集団就職 / 高度経済成長期 / 地域労働市場 |
Research Abstract |
1 一国経済水準の高度化を図る選択肢の一つとして、時代に許される範囲で行われた我が国の「重化学工業化」は、工業・流通部門全体の水準を引上げ 「高度経済成長」の時代とよばれる画期となった。必要な労働力の吸引と養成は、空間的には国内の限定された地域で行われ、第一次産業部門の解体とその担い手の他部門への移行の形で行われた。労働者の養成は、伝統的徒弟奉行形態、企業内教育、この時代の後半で展開された高校での職業教育によって混然と行われていた。「集団就職」形態をとって、地方農村から工業地帯へ移動していった多くの若年労働者の就業産業部門、企業階層は、概して、労働集約的産業部門、もしくは、そこへ既存のプ-ルから労働力を奪取されていった種々の産業部門にわたる中小零細企業層であった。前者は、女子の繊維産業群、男子の機械組立産業群であり、後者は、大都会の、環境衛生、飲食娯楽等の零細な企業群である。家政婦(お手伝い)も女子では目立つ。 2 農村の側からみれば、農基法に象微されるような日本農業の転換期にあたっており、昭和20年代からの過剰人口問題をひきずりつつ、産業としての農業を支えるに足る経営体の確立過程の中で、「生活を都会に求める」選択が、家として、また学校の進路指導の中で行われ、商工業労働力需要を充足していった。農業経営の合理化、拡大、それにかかわる資金需要等の条件の中で押し出されていった人々といえる。 3 彼ら自身の「人生の苦労」は、多くの戦時中の、あるいは戦争後の青少時代にひき続く、異郷の地での修業時代の苦労であり、時代へのかかわりの意識というよりも、より普遍的な形で語られるものである。この苦労に比しての、現在の「安定と満足」の意識なのであり、また故郷への強い執着(したがって強い同郷意識)も特徴的であって、大都会生活者の現時点での一定の層を代表するものである。
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