1990 Fiscal Year Annual Research Report
西ドイツにおける「政治」科の授業設計と展開過程に関する事例研究
Project/Area Number |
02610113
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
的場 正美 名古屋大学, 教育学部, 助教授 (40142286)
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Keywords | 西ドイツの政治教育 / 授業計画理論 / 指導要領 / 問題解決学習 / 葛藤分析 / 教授学 |
Research Abstract |
西ドイツの政治教育の授業展開における指導要領、授業計画資料、教授学、教科書、補助資料などの相互の関係を明らかにすることが、本研究の目的であるが、以下の成果と残された課題を明らかにした。 1・「青年運動」「婦人問題」等の授業記録を入手し、文字化した。これらの授業過程によると、教科書そのものの記述を学習することは弱く、文書資料やOHPによる図版の提示を媒介として、討論の形で授業は進められている。しかし、授業の実施過程と授業計画理論における授業段階との関係を考察するには、少なくとも1単元の記録が必要である。 2・ハイリゲン(W.Hilligen)やガ-ゲル(W.Gagel)によって編集された教科書『見る 判断する 行動する』と教師用教本に示されている授業段階は基本的には7段階の問題解決学習であり、教育内容はコンフリックトを含んだ社時事問題が多い。文部省の刊行した授業計画資料に示されている授業段階も問題解決学習である。この同一性はガ-ゲルが指導要領委員会の授業計画資料作成部会の座長であったことによる。 3・ガ-ゲルの授業計画理論には範例方式を構成する概念「乗り込み」(Einstieg)が授業の導入段階で重要な役割を果たす。また、彼の授業計画理論はベルリン学派の学習理論とクラフキ(W.Klafki)の教授学を積極的に受け入れて構成されている。 4・授業の実施段階で使用される資料は、いくつかの授業では、子ども相互の討論を引き出す役割を担っている。詳細な授業記録(例:単元名「青年運動」)に基づいて、子どもの認識過程を明らかにし、教科書の記述、指導要領の目標、資料の内容がどのように子どもの認識の形成に関わっているかを追求することによって、授業過程における、補助教材、教科書、指導要領、の役割が重層的に明らかに出来るのではないかという、展望を得た。
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