1991 Fiscal Year Annual Research Report
現象学・解釈学・批判理論から見たデュ-イ教育理論の比較哲学的研究
Project/Area Number |
02610114
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
早川 操 名古屋大学, 教育学部, 助教授 (50183562)
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Keywords | 言語論的転回 / 再コンテクスト化 / ことばによる自己創造 / 詩的想像力 / ロゴセントリズム / コミュニケ-ション的探究 / 間・間主観的合意 / 相互成長 |
Research Abstract |
今年度は、デュ-イ哲学の社会論・教育論に焦点をあてて、その現代的意議を検討した。とりわけ「コミュニケ-ション」と「探究」との関係に焦点をあて、この点に関してR.ロ-ティ、J.ハバ-マス、デュ-イがそれぞれどのような見解をいだいているかを考察・検討した。 1.解釈学の伝統に基づいて独自の哲学を展開しているロ-ティは、みずからを「デュ-イ主義者」と位置づけて探究・コミュニケ-ション・教育についてユニ-クな見解を展開しており、その見解は部分的にはデュ-イのそれと共通したものがある。特に、探究をことばによる感情・態度・信念のネットワ-クの再コンテクスト化と捉える立場は、デュ-イの探究論を現代の言語行為論の観点から再検討したものとして評価できる。 2.批判理論を代表するハバ-マスは「ロゴセントリズム(理論中心主義)的な理性」を批比して、「コミュニケ-ション的理性」を展開する。対立する見解を和解・融合できる包括的・合理的なコンセンサスを求める彼の立場(間・間主観的合意を求める立場)は、デュ-イの社会的探究の理論と共通するものがある。ロ-ティはこの立場をデュ-イ=ハバ-マス路線と呼んで批判するが、我々はデュ-イたちの見解をより正統と考える。 3.教育的な「相互成長」の基礎はたえざる自己創造と状況変容を追求する探究の過程に見いだせる、というのがデュ-イの見解である。彼の探究は「状況知・理論知・コミュニケ-ション知(道徳知)・実践知」をひとつに統合した「コミュニケ-ション的探究」であり、言語行為論的自己実現を提唱するロ-ティの理論や普偏的合意を追求するるハバ-マスの理論も取り込む可能性をもった理論である。
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