Research Abstract |
初年度の本年は,もっぱら現地調査による資料記録に重点をおき,北海道,東北,中部,北陸の各地分農村,漁村,山村,博物館や資料館を訪ねた。その結果,興味ぶかいことがいくつも見出された。その中から特に注目すベきものをあげて記述する。 1,運搬具について。荷縄は主にワラ製のものが多く,調査地域全域に見られたが,問題は,その使用法である。それが木の枠やカゴなどと結びつくとき,いろいろな変化をみせて,頭掛け運搬や肩掛け運搬,その中間の前胸掛け運般などがある。その下に敷く背中あては、山形のバンドリが有名であるが、東日本各地にみられ,名称は,ネゴ・ネコ(青森),ネコダ(富山),ネコゲラ(秋田),セナコウジ(新潟),ワラバト(石川)というぐあいに多様である。その原理は同じだとしても形態は多様である。これと同じ系続のものが屋之島などにもあってセイタという。 アイヌの民具として,頭掛け背負い様子があるが,アイヌ語でシケニとかニエシケという。これは無爪背負い様子の原型と思われ,わが国の背負い様子の発達を解明する上で貴重である。 2,箕のことをアイヌはムイといい,ミと同系語である。アイヌは木を刳って箕を作るが、東北では木の皮製の皮ミがあって,木製として両者は通ずる。しかし東北には竹製の箕もあってそれは南日本のトカラ列島までつづく。トカラ以南は丸口タイプの箕が多いようであるが、トカラで南北のタイプが区別される。アイヌの箕と九州などの箕の関係は今後の調査をまたねばならない。 3.信仰について。アイヌは家の中に,アペフチカムイという火の神を祀り、重要視する。これは琉球と同じことのように.思われるが、今後,西日本をよく調べて比較せねばならない。アイヌの祖霊祭の在り方と死体取扱いなどはトカラ列島などと似ているが,その比較が重要である。
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