Research Abstract |
研究実施計画にしたがって,調査・研究を行なってきた。7月と8月の夏期休業中を利用して,「宗門人別御改帳」と「宗門送り状」の筆写・採集を集中的に実施した。長野県東筑摩郡朝日村においては,旧村の古見村分旧名主4家の文書の中から,80年間にわたる43年分を採集し,愛知県北設楽郡稲武町においては,40〜50軒の戸数の宝暦11年(1761)から明治3年(1870)にわたるおよそ110年間68年分の「宗門人別御改帳」を採集し終えた。そしてそれを,根気よく家ごとにカ-ド化する作業を続け,古見村分では219戸の家族カ-ドを作成し,稲橋村分では72戸の家族カ-ドを作成した。その家族カ-ドには,初出年度の戸主を基本として,持高,戸主名,家族名とそれぞれの続柄,年令,改名,移動の年次と理由,転出先転入元,他所稼など多くの情報を記入した。そして稲橋村の家族カ-ドをベ-スにして,個人ごとにパソコンへ入力した。その内容分析はまだ充分なしえないが,家ごとの持高変化,個人ごとの情報が得られ,山間村の階層分解の激しさがありながら,意外に絶家が少ない点が明らかになってきた。他方で,宗門人別帳の史料的性格をひろく検討するため,長野県史刊行会採集分,国立国会図書館・史料館・徳川林政史研究所に採集・所蔵されているものを検討した。さらに,古見村関係では,一紙文書を採集して村内の諸促争とそれに関わった人物のリストアップにつとめ,部分的に家族カ-ドとのつき合わせを行なってきた。ただこの面では予想以上に一紙文書があるので,諸促争も含めた形でのまとめをするところまでは研究をすすめることができなかった。ひきつづいて諸促争文書の採集を行ない,総合的な検討を行なっていくつもりである。
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