1990 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02610149
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
岸田 裕之 広島大学, 文学部, 教授 (10093585)
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Keywords | 大名領国 / 経済構造 / 西国 / 瀬戸内海 / 海賊 / 戦国大名 / 港町 / 警固料 |
Research Abstract |
本研究は、古代以来列島内外の文物の交流の大動脈としての地位を占めていた瀬戸内海地域に中世後期に成立した大名領国を主たる分析の対象として、中国・朝鮮・ヨ-ロッパとの貿易を含む流通のひろがりと、その担い手であった商人・運輸業者・海賊衆などの活動と、それに積極的に関与していった国人領主や大名権力の動向などを明らかにし、人や物の交流を支える経済の構造を明らかにすることを目的にしている。 今年度においては、とくに東京大学文学部・同史料編纂所、京都大学文学部、山口県文書館、九州大学文学部、九州市立博物館等において、未刊の関係史料の調査につとめ、数多くの関係史料について撮影・蒐集をおこなった。 そのなかでも、中国地域の毛利氏領国内の港町において、海上輸送に従事する武士的商人について数例確かめることができたことは成果と言える。 また、山口県文書館架蔵の「村上家文書」の調査・撮影に基づいてその整理・検討を進めた結果、現在までのところ、海の大名と言ってもよい「海賊」能島村上氏の支配構造のおよその全体像を導き出しえた。すなわち、従来のような能島村上氏を陸の戦国大名毛利氏の「水軍」としてとらえる見解とは異なって、その活動が瀬戸内海から北九州の海域に及んでいたこと、そして毛利氏のほか大友氏や織田氏ら各地の戦国大名とも友好的関係を取り結んでいたこと、それは各戦国大名領国内の港町において警固料=通航料を徴収していたことと関係あること等々、史料的にも明確に証明できたのである。
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