1990 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02610153
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
廣瀬 良弘 駒沢大学, 文学部, 助教授 (20199128)
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Keywords | 戦国大名 / 葬祭 / 無縁所 / 授戒会 / 曹洞宗 / 禅僧・禅寺 / 切紙 / 過去帳 |
Research Abstract |
日本史上,もっとも多くの寺院が建立されたのは戦国期から近世初期にかけてである。禅宗とくに曹洞宗においても同様である。したがって禅宗寺院や禅僧の活動と地域社会との関連について明らかにすることは当該期の研究に必須である。そこで本研究は,つぎの三点の項目を設けて考察を試みた。 まず,(1)戦国大名の宗教統制とアジ-ルの問題,在地領主と寺院との関連について考察した。長年寺(群馬県榛名町)は長野氏,多宝院(下妻市)は多賀谷氏,福昌寺(もと鹿児島市)は島津氏の菩提寺で,16世紀はじめの成立であり、走入者保護の特権を持っていた。それは領内統治上,菩提寺の聖域化が必要であったからである。しかし,戦国大名の権力が増大するにしたがって,それはさして必要でなくなり,罪人処罰が優先される至ることを明らかにした。なお,禅昌寺(山口市)は無縁所寺院として知られるが,「祠堂施入目録」によれば毛利氏や近隣の在地領主の施入がみられ,「無縁」についての今後の検討が必要であることを確認した。つぎに(2)禅僧と禅寺の活動とその地域社会に果した機能について考究した。徳勝寺(長浜市)や乾坤院(愛知県東浦町)の授戒会帳により,禅僧の行った授戒会に戦国大名・国人・農民・諸職人等が参加しており,戦国大名や国人の領内統治や村落間の交流や村落住人の結束などに影響を与えたことを明らかにした。東持寺(結城市)所蔵の禅僧の語録により,近世初期には下人下女にまで禅僧による葬儀が行われていたことが明らかとなった。戦国期に切紙の授受がさかんとなるが葬祭や祈祷による活動を行った禅僧たちの精神的支えとなったことが知られる。さらに(3)諸寺院の過去帳の分析を通じて寺檀関係の成立と展開について考察した。寛永元年ごろより,過去帳への記載がコンスタントになり,寛文元年ごろより急増する。小農民の自立と関連すると考える。
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Research Products
(1 results)