1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02610163
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Research Institution | Nagaoka College of Technology |
Principal Investigator |
梅木 哲人 長岡工業高等専門学校, 一般教育科, 教授 (20185060)
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Keywords | 琉球の士族 / 家統と家部 / 琉球の地頭制 / 琉球の知行制 |
Research Abstract |
今年度の研究で主に目的としたところは、琉球国の独自の権力機構を明確に把握するということであった。しかし結果的には権力機構の問題の更に基礎となっている近世琉球の士族社会の結算の仕方が本州諸藩の武士社会の結集の仕方と全く異なっているという問題に行きついた。 主として使用した史料である「琉球一件帳」・「琉球雑記」は、19世紀初頭に薩摩側からの要請で作成された諸事の書き上げであるが、これが琉球の士族を全体として対ることが出来るほとんど唯一の史料である。 これによれば、琉球の士族は王子家部、按司家部、総地頭家部、二方持脇地頭家部、一方持脇地頭家部の五つの家部から成る上級士と地頭職と知行を持たない士(下級士)から成っていた。地頭職と知行は上級士の経済的基礎をなすとともに家格決定の要因であった。下級士は王府の下級職に就くか上級士に一時的に付随することで王府より扶持を得ていた。扶熱ももらえない下級士も多くいた。 近世流球では家を表わす語として「家統」という語と「家部」という語があるが、このうち家部が地頭制や知行制の単位となっていることから分るように士族社会を構成する家であったのである。しかし家部の実態としては家産制・家禄制的な構造は成立しておらず、王を中心とする官僚群(官人)であり、王との関係により地頭職や知行を受けることでそれぞれの家格の家部が成立していたのである。琉球の士族社会には土地を媒介する封建的主従関係の要素は無いのであり、そのことが本州諸藩と異なる結集の仕方の最大の要因となっているのである。 これらの点を近世琉球士族社会の中に発見出来たことが本研究の意義であろうが、他方家譜・地頭・知行・家部等々のことを更に深く追求しなければならないという課題も改めて自覚するに至った。
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