1990 Fiscal Year Annual Research Report
摂関時代に於ける貴族子弟の意識についてー古記録の研究を通してー
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02610165
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Research Institution | Paleological Association of Japan Inc. |
Principal Investigator |
関口 力 (財)古代学協会, 古代学研究所, 講師 (30216527)
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Keywords | 古記録 / 日記 / 平安貴族 / 儀式 / 中右記 |
Research Abstract |
本年度の成果としては,「中右記に見える貴族と日記」(『山中裕先生古稀記念論集』所収),「稲荷祭と七条大路」(伏見稲荷志社編『朱」35号所収)の二点を挙げることができる。いずれも刊行期日が大幅に遅れ,いまだに活字となっていないのが現状である。前者については再校を既に提出済であるが,後者は未だに初校も出ていない。 内容の関しては,前者は,私の研究テ-マが古記録であるため,まず当時の貴族にとって古記録とは何であったかを確認するためのものであった。当時の公事は儀式化されており,従って官人の一挙手一投足に関心が向けられており,官人としての資質は,式次第の運営如何にかかっていた。また歴史は緩漫ではあるが,常に動いていることから,時の推移とともに「近代例」が埋積し,儀式書をマスタ-するだけではとても奉公の実を挙げることはできなかった。こうした状況を考えた場合,即戦力として役立つのは,やはり先祖の遣した日記の記載であったろう。また参考書としての意味ばかりでなく,売買の対象となっていることも注目され,私なりの古記録に対する概念が確立できたと感じている。 また後者については,平安貴族の生活の場であった平安京について考える必要を覚え,その手がかりとして,摂関期より盛大化してゆく稲荷祭に焦点を当てた。その中心となるのは,はかばかしき地にあらずと貴族から反感を買った七条大路周辺であり,そこにはまぎれもなく,生の活力が見られるのである。この一文を草したことにより,貴族の生活ばかりを見てゆく一面的視点に陥ることなく,広く当時の生活実態を考えることができたと考えている。 今後も、これらの成果を踏まえ,更に問題を深化させてゆきたいて考えている。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 関口 力: "稲荷祭と七条大路" 伏見稲荷大社編『朱』(未刊). 35. (1991)
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[Publications] 関口 力: "山中裕先生古稀記念論集(未刊)" 吉川弘文館, (1991)