1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02610181
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
馬場 恵二 明治大学, 文学部, 教授 (90139436)
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Keywords | 市民権付与 / 外人顕彰決議 / アテネ民主政 / 在留外人身分 / metaoikos / アナクシラス墓碑 / 有動産所有 / 『ギリシア案内記』 |
Research Abstract |
平成3年度にはアテネ以外のメガラ、ボイオティア、フォキス、ロクリス、アイトリア地方の公刊碑文史料を収集したほか、市民権付与や特権付与の外人顕彰決議の重要なものについてはその写真版を可能なかぎり収集して、明大と東大の大学院生各1名の協力を得ながら史料の分析に努めた。しかし、ギリシア全域にわたる史料の点数は膨大で、全体の総括的整理と特権付与の各国別地域的動態の分析はなお今後の課題として残ることになった。 今年度は最終年度でもある関係で、「研究成果報告書」の作成にとりかかった。報告書の表題は『アテネ民主政と在留外人身分の成立および消滅』である。アテネにおける在留外人身分の成立は前6世紀末のクレイステネスの改革に求められる、というのは現在では学界の常識となっているが、さて、その具体的な証拠はとなると、「歴史の父」ヘロドトスや哲人アリストテレスなどの筆になる後代の歴史叙述がもっぱら担ぎ出されて、同時代資料は皆無とされていた。しかし筆者は、筆者自身が1983年にアテネのケラミコス考古学博物館で、在留外人を意味するアテネ最古の単語metaoikosを発見したアナクシラス墓碑の碑銘(SEG34,n.47)を今回の研究活動の一環としてさらに詳しく分析して、この墓碑銘がアテネ在留外人身分の成立の年代推定に関して決定的に重要な意味をもっていることを証明した。 一方、アテネ在留外人身分の消滅については、前3世紀アテネの国内事情が大いに関わると観点から、非市民の不動産所有を咎めた財産没収の執行記録を最近発見されたカリアス顕彰決議碑文およびパウサニアス『ギリシア案内記』第1巻の記述と突き合わせて、新たな研究視点を提示することに努めた。
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