1991 Fiscal Year Annual Research Report
コロンビア大学図書館所蔵ア-サ-・シモンズ夫妻の自筆往復書筒の解読と活字化
Project/Area Number |
02610220
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Research Institution | Saitama J. W. College |
Principal Investigator |
宮澤 眞一 埼玉女子短期大学, 英語科, 教授 (80109727)
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Keywords | ア-サ-・シモンズ / 英国世紀末文学 / シモンズ伝記研究 / 自筆私的文書類の利用 / 未刊自筆書筒の海外調査 / 解読と転写テキスト |
Research Abstract |
ア-サ-・シモンズ(Arthur Symons:1865ー1945)は、1890年代の英国世紀末文学を代表する詩人・評論家であるが、明治時代このかた日本の文学者の間においても、印象批評の旗手として小林秀雄が「様々なる意匠」のなかで紹介するなど、愛読者が輩出したことで知られている。内外のシモンズの作品研究や文学史的評価は文学史的評価は戦後に盛んであったけれども、宇野浩二が嘆息したように、シモンズの伝記についてはほとんど知られていなかった。伝記研究を進めるうえで不可欠な基礎資料となる自筆私的文書類(autograph personal papers)が、欧米諸国の図書館に散在しているばかりでなく、数量的にも相当なものであるので、このような地味で基礎的な調査研究が余り顧みられなかったことが、伝記研究の遅れを招いた一因であろうと思われる。 日本からの研究者が未刊書簡の海外所在先を探し廻り、現地で解読や転写に努める。これは新しい文学研究の方法であろうが、実際には容易でない。1979年から毎年のように海外でシモンズの伝記調査を繰る返す間に、ほぼ1000通の自筆書簡を整理できていた。最後まで手づかずいたコロンビア大学図書館所蔵のシモンズ夫妻往復自筆書簡が、今回の科研費の補助により調査できるようになり、大きな励みになった。研究計画に沿って、初年度八月末にニュ-ヨ-クに滞在し、また次年度七月末の渡英により、この膨大な書簡コレクションをはじめて本格的に調査し整理する作業に取り組んだ。当初の予想では約1000通のコレクションであるはずが、今回の徹底調査によって作製した往復書簡リストでは、総数で2041通に達する膨大な資料であることが判明した。別途に印刷して発表した『報告書』の冊子に、全ての往復書簡の内容が概括的に把握できるように作製したリストを公表するので、内外のシモンズ伝記研究の基礎資料になることと思う。『報告書』には解読と活字化の具体例としてロ-ダ宛シモンズ書簡の一部も掲載している。四百字詰め原稿用紙に換算すれば一万枚を凌駕する書簡解読のタイプ原稿が完了したので、私としては最大限に活用して念願のシモンズ伝を近々執筆刊行したい予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 宮澤 真一: "A Study of the Correspondence between Arthur Symons and His Wife" 埼玉女子短期大学研究紀要. 4. 1-35 (1993)
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[Publications] 宮澤 眞一: "ア-サ-・シモンズ書筒集" 高城量房出版, 300 (1992)