1991 Fiscal Year Annual Research Report
英米刑事司法における司法取引(答弁取引)の史的渊源
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02620001
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小山 貞夫 東北大学, 法学部, 教授 (30005764)
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Keywords | 英米型刑事訴訟 / 答弁答引 / 絶対王政 / 刑事司法(裁判) / 巡回裁判(アザイズ裁判) / 陪審 / 自白 / 訴訟件数の増大 |
Research Abstract |
本研究は、現在アメリカで大きく問題とされている答弁取引の史的渊源を探るべく,アメリカ建国以前にあたる絶対王政期イギリスでの巡回裁判所の残存刑事訴訟記録集を研究することを主要作業としたが,平成3年度は平成2年度の実績に基づき,一応その完成を見,近く公刊される論文集の一部として、その成果を論文の形で公表するはずである。その研究成果の大要は以下のごとし。 1.答弁取引は,19世紀末アメリカで初めて出現したという現在の定説にもかかわらず,16世紀末17世紀初めのイギリス絶対王政期の巡回裁判記録集中に、当時かなり大量に出現したらしいことを推測させる史料が残っている。 2.同種の史料が1570年代前には残存していないので,答弁取引はこの時期以降に発生したものらしいことがわかる。 3.この時間には、巡回裁判が取り扱うべき犯罪の起訴数も急増している。 4.このことと関係して,一つの陪審が担当すべき事件数・被告人数も急増し,陪審は実質的審理などできる状況になく,陪審審理は形式に随していたと思われる。 5.このような深刻な事態に直面し,巡回裁判官は種々の自助努力をしたが,その一つに自らの責任で被告人と取引し,一段低い犯罪での起訴・科刑を条件に自白を得るという取引を多用し、実質審理数を削減し,又陪審審理を経ずに裁判官の主導により事件を処理できる答弁取引を導入したと思われる。 6.この限りでは,現在アメリカの答弁取引と酷似し,同一現象である。 7.しかしなぜこの時期にこれが生じたのか,又17世紀の革命期の前後にこれがどう発展したかの追究は,文年度までの研究ではできなかった。
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