1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02620017
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
山下 丈 広島大学, 法学部, 教授 (30033749)
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Keywords | EC / EC市場統合 / EFTA / 保険業法 / 保険事業 / 保険監督 / 規制緩和 / 保険法の調和 |
Research Abstract |
1.公正取引委員会が平成3年7月に「独禁法適用除外制度の見直し」で指摘した点をうけて,大蔵省は生命保険料率の認可制度を徹廃し94年度から自由化する方針を明かにした。EC市場統合のためEC委員会は,EC諸国の保険事業の国家監督をできるだけ規制緩和するとともに,母国での監督のみで域内取引の完全自由化を目指そうとしている。 2.その際に重視されるのは,(1)EC各国で保険料率と保険料率と保険約款の国家監督を原則として廃止し,保険の価格と商品の自由化をはかり,自由競争を促進すること,および(2)域外諸国とも,相互性の原則により,できるだけ同様の規制緩和が求められることである。 3.今年度の研究では,(1)EFTA加盟国であるノルウェ-の世界最新の保険契約立法の分析により,将来のEFTAとECとの統合により,契約法ではあるが同法がEC最新の立法となる可能性があることを指摘するとともに,(2)同じEFTA内のスイスの監督法がECとの関係から規制緩和され始めていることに触れ,(3)しめくくりとして,EC経済法の最新動向とドイツの実体的保険国家監督の終えんにつき述べた。 4.保険事業の国家監督には,(1)厳格はいわゆる実体的監督主義をとるドイツをはじめとする大陸諸国方式と,(2)比較的自由で自主規制を尊重するイギリス方式があり,これまでのECとEFTAの経緯はイギリス方式の優位性を示している。日本は従来ドイツ保険監督法を母法としてドイツよりも厳格な実体的国家監督を行ってきたのだが,今回の保検業法改正によればそれが大きく改められそうである。 5.そうしたドイツの監督主義は,実はスイスのそれを母法とするものであった。これからはスイス法とスイスの保険市場のもう少し詳細な研究に取り組み,いわゆる実体的国家監督主義のもたらした功罪を考究してみたいと考えている。
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[Publications] 山下 丈: "1990年ノルウェ-保険契約法について" 損害保険研究. 52巻3号. 1-41 (1990)
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[Publications] 山下 丈: "1990年ノルウェ-保険契約法(人保険の部)について" 文研論集. 1-57 (1992)
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[Publications] 山下 丈: "EC市場統合とスイスの保険監督,競争" 広島法学. 16巻1号. 1-23 (1992)
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[Publications] 山下 丈: "EC経済法と保険事業の国家監督規制の緩和" 鈴木辰紹先生還暦記念論文集.