1990 Fiscal Year Annual Research Report
疾病労働者の法的保護ー労働法と社会保障法の総合の視点から
Project/Area Number |
02620023
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
西谷 敏 大阪市立大学, 法学部, 教授 (70047314)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木下 秀雄 大阪市立大学, 法学部, 助教授 (50161534)
|
Keywords | 労働者保護 / 疾病労働者 / 解雇保護 / 医療保障 |
Research Abstract |
本研究では、疾病労働者に対する企業内対応と、健康保険等の法制度の運用の実態を明らかにすることを課題としていた。 本年度においては、(1)日本における、疾病労働者に対する取扱をめぐる判例・学説の収集・整理、(2)外国における取扱についての文献の収集、及び学説の検討、(3)大阪を中心として企業等についての、聞取り調査を中心とした実態調査、を行なった。 この結果、(1)業務上の負傷による疾病が症状固定に至った場合、労基法19条1項に寄る解雇禁止が及ばないとして、解雇を有効と判断した事例。あるいは、労基法19条1項に言う業務上の負傷等により療養のために休業している間とは、一部休業で足り、いわゆるリハビリ就労中であっても解雇制限は及ぶが、症状が固定された以上は、解雇できるとした事例等が見られることが、明らかになった(名古屋地裁平成元年7月28日光洋運輸事件判決、大阪地裁平成2年8月31日大阪築港運輸事件決定。名古屋地裁平成2年4月27日名古屋埠頭事件判決等)。また、(2)ドイツにおいても、疾病を理由とした解雇を広く認めるならば、事実上、労働者に日常的に契約上認められている以上の労務給付を履行するよう強制する結果になる、との指摘がなされていることが明らかになった(E.Dorndorf,“Vertragsdurchsetzung als Funktion des Kundigungsschutzes",ZfA 1989, 345ff.)。(3)企業においては、有給休暇制度が事実上病気休暇の代替物として利用されており、また、長期療養を必要とする場合については比較的規模の大きな企業には休業制度が置かれているが、小規模企業ではこうした制度も不備であること、等が明らかになった
|
Research Products
(1 results)