1990 Fiscal Year Annual Research Report
比較研究によるスコットランドとアイアランドの「経済改良」思想の歴史的意義の究明
Project/Area Number |
02630007
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
関 源太郎 九州大学, 経済学部, 助教授 (60117140)
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Keywords | スコットランドとイングランド / アイアランドとスコットランド / スコットランドとアイアランド / 国民的支配と従属 / 不在地主と在地地主 / 経済改良 / インダストリィ / 利己心と公共心 |
Research Abstract |
18世紀のスコットランドおよびアイアランドにおいて少なからず刊行された「経済改良」推進のための経済パンフレットの理解を深めるうえで決して無視できない歴史的背景として、両者とも、先進国(あるいは先進地域)であったイングランドからの政治的・社会的・経済的な強い影響・支配下にあったことがあげられる(この点は、サ-・ジョン・クラ-クに関する拙稿を参照)が、とりわけ前世紀におけるアイアランドへの三度にわたるイングランドからの植民がこの点に関する両者間の相違を歴史的に形成した。このこととスコットランドの「経済改良」の提言パンフレットに窺われるアイアランド評価とは密接に関連していると理解される。すなわち、1707年の合邦以前にはアイアランドのイングランド植民地としての側面を強調し、このことからスコットランドのアイアランド化に警告を発する見解(例えば、A.フレッチャ-など)が目をひくが、1720〜30年代へと時代がくだるとアイアランドにおける「リネン評議会」(1711設立)の活動などにみられるような現実展開を考慮して、イングランドの毛織物工業を中心とした経済発展の戦略を前提としこれとの競合を避けた自国の国民経済の開発の構想を提起する提言(例えば、P.リンズィなど)が現われる。また、近代的商品経済の推進主体形成の問題は両者において等しく焦眉の課題として提起されたが、特にアイアランドでは不在地主制が強固であったためか上層階級の「奢侈」への直接的な非難とその悪影響への警戒がより顕著である。これに対し、概して、スコットランドでは合邦後も自国に留まった中小の在地地主層(レア-ド=ジェントリィ層)を中核に据えた経済運営と改良が模索されていることが一つの大きな特徴をなすと思われる。
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