1990 Fiscal Year Annual Research Report
日本企業の賃金体系の変遷に関する歴史的・実証的研究ー1945年〜現在ー
Project/Area Number |
02630033
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
石田 光男 同志社大学, 文学部, 教授 (40121587)
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Keywords | 能力主義 / 賃金制度 / 賃金査定 / 人事考課 / 職務給 / 労使関係 / 職能給 / 資格制度 |
Research Abstract |
平成2年度における研究は(1)八幡製鉄(株)と十條製紙(株)の戦後から近年に至る賃金制度の変遷とその画期を探る作業、(2)主として昭和30年から昭和40年代にかけての賃金関係の文献レビュ-、(3)企業の賃金制度の現状の概観とその分析とからなる。(1)について。労使当事者からのヒアリングと関係資料の解読を通じて、(a)八幡では、昭和22年職員工員身分の廃止、28年の職分制度導入、37年職務給導入、42年新職掌制度導入、45年富士製鉄との合併に伴う新人事制度導入、62年新賃金制度導入、(b)十條では昭和24年職務給導入、27年同改定、39年同改定、45年職務給に技能基準の導入.が重要な画期であることが明らかになった。これらの変遷史における戦後日本社会への枢要な含意は、昇給査定、昇進・昇格制度のより競争親和的な方向への一貫した動きである。職務的給与はこれとは対抗的な欧米的な近代化の方向を内庄させていたために、戦後の賃金制度改革は欧米的近代化と日本的“超近代"化とのやや無自覚的な葛藤の歴史であった。(2)は現在なお資料収集の段階であるが、上の制度改革の思想的葛藤を天度に同時代の論調(=時代の自己意識)を解析することを意図している。(3)別の機会に行ったアンケ-ト調査をもとに関西の190社の現行の賃金制度を労働者間の競争刺激度から分類し、それらが労働組合機能の形骸化とどのように相関しているかの分析を行った。戦後の賃金制度改革の致達点がこれにより明らかになると同時に、世上言われている日本的経営の内実を新しい視角から実証的に明らかにしようとした。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 石田 光男: "八幡製鉄の賃金制度の変遷" 評論・社会科学. 43.
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[Publications] 石田 光男: "賃金の社会科学ー日本とイギリスー" 中央経済社, 238 (1990)