1990 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02630042
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
幸田 亮一 佐賀大学, 経済学部, 文部教官助教授 (60153475)
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Keywords | ドイツ経済史 / 工作機械工業 / 技術史 / 経営史 / 技術移転 / 生産技術 / ドイツ工業 |
Research Abstract |
この研究に着手したときには予想もしなかったドイツ統合とそれに伴うドイツ経済への新たな関心の増大の中で、ドイツ工業の中核をなす機械工業、とりわけ工作機械工業史研究の意義はいっそう大きくなった。 初年度の研究で明らかになったことは以下のとおりである。 第一に、1860/70年代に遡ることのできるドイツ工作機械工業の成立期に、早くも今日に至る主要な四大産地の基盤が形成されたことが明らかになった。その中で特に重要な役割を果たしたのは、通常考えられているル-ル工業地帯とは全く違うザクセンのケムニッツであった。この点は、コメコンの生産力基盤を提供した旧東ドイツの工作機械工業が、ドイツ統合後どう展開するかを考える上でも、再確認しておくべき史実である。なお昨年8月の経営史学会関西部会大会でこの研究成果の一部を報告した。 第二に、1860/70年代のドイツ工作機械工業に影響を与えた技術革新の中身を明らかにしたことである。19世紀半ばにドイツの工作機械製造業者がモデルにしたのは、世界の工作機械製造の指導者であったイギリスのホイットワ-スで、1870年頃にはようやくそれに匹敵する機械を作れるようになったが、まさにこの時期に、工作機械をめぐる技術革新の中心は、大量生産用工作機械を開発したアメリカに移っていた。そのためドイツにおける工作機械工業自立の課題は世紀転換期まで持ち越されることになった。 第三に、技術移転問題では、ドイツへの技術移転問題と併行してドイツから他国への技術移転問題にも取り組み、事例として、研究史の空白である、1870年代から1945年にかけてのドイツ工作機械技術の日本への移転の実態を明らかにした。その成果の一部は、昨年の7月に東京で開かれた独日技術移転シンポジウムで報告した。
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