1990 Fiscal Year Annual Research Report
電源開発・電気化学工業の歴史的展開と流域社会の再編成に関する実証的研究
Project/Area Number |
02630044
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
深井 純一 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (40066692)
|
Keywords | 電源開発史 / 電気化学工業史 / 流域社会 / 地域再編成 / ダム建設の社会的影響 / 開発をめぐる利害調整 |
Research Abstract |
本年度は(財)電力中央研究所所蔵の膨大な旧・日本発送電(株)の蔵書・文書類を閲覧し、必要個所の複写を行なった。しかし複写作業は4分の1、複写史料の整理は3分の2を次年度に残している。また電源地帯の地域史料の閲覧・複写を行なった。岐阜・富山・新潟・長野の県史と全市町村史を完了したが、複写史料の整理は3分の1を残している。その他奈良・和歌山・福岡・熊本・宮崎県に関する作業は進行中である。なお電気化学工業史に関しては、主要業界の史資料と数社の社史・工場史、工場立地市町村の史料を補充収集するに止まった。 現在までの分析によれば、昭和初期に電源開発が高ダム方式に移行するに伴い、各地で既存利水産業との間の紛争が激化し、特に林業の筏・管流しおよび遡上魚を対象とする漁業は、ダムと真っ向から対立した。またダム建設後の土砂の堰き止めによる上流部の河床上昇、下流部の河床低下および河口部付近の海岸砂丘の縮小が進行するにつれて、水害問題、農業取水障害、海岸砂防問題が各地に発生、深刻化しはじめた。 さらに遠距離送電網の形成とともに、電源地帯が工業未開発のままに取り残されたために、大都市と先進工業地帯への電源収奪に抵抗する「県外送電反対運動」も、宮崎県などの一部地域では見られるに至った。 これらのうち私が追求しているのは、富山県下の各河川における農業取水施設の合口による水利紛争の解決、新潟県阿賀野川における筏・舟運路のダムへの併設、そして電力利用工業の立地を実現した富山県下各地と宮崎県延岡市の場合である。林業と漁業に関しては効果不十分であるが、地域開発をめぐる利害の総合調整過程の典型事例として今後さらに究明したい。現在執筆中の別掲論文の他に、平成3年度中に私の共編著『産業・地域・生活の再編成』(御茶の水書房)に「電源開発と流域編成」の標題で第2の中間論文を収録する予定である。
|
-
[Publications] 深井 純一: "独占資本主義段階の地域編或(2)" 立命館産業社会論集. 27巻2号. (1991)
-
[Publications] 神立 春樹・深井 純一・中島 正道 共編: "産業・地域・生活の再編成ー日本近代経済史の視点ー" 御茶の水書房, 400 (1992)