1990 Fiscal Year Annual Research Report
フェムト秒分光法による固体中遷移金属イオンの超高速無輻射緩和過程の研究
Project/Area Number |
02640247
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 吉朗 東北大学, 工学部, 助手 (80133932)
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Keywords | フェムト秒分光 / 遷移金属イオン / エネルギ-緩和 / 無輻射遷移 / 励起状態吸収 / 時間分解吸収スペクトル |
Research Abstract |
当該年度は、主として固体中常磁性イオンでの光励起状態の超高速エネルギ-緩和過程をフェムト秒領域で追跡するためのレ-ザ-フォトリシス系の製作に当たった。CWモ-ド同期NdーYAGレ-ザ-からの第二高調波をポンプ光としてRh6G色素を同期励起し、幅0.8psエネルギ-5nJの600nm光を得た。KD_*Pを用いたポッケルスセルにより単一パルスを取り出した後、光ファイバ-回析格子対を通過させることにより、0.1psにパルス幅を圧縮した。さらに、Xe励起色素増幅器によりエネルギ-を600倍に増幅した。現在、吸光測定のプロ-ブ光として用いる自己位相変調波をより広いスペクトル域で安定に発生させるため、増幅器の利得を増加させることを試みている。 以上のフェムト秒フォトリシス系の製作の一方、現有のモ-ド同期ルビ-レ-ザ-(幅40ps)を用いたピコ秒フォトリシス系により、ルビ-結晶でのCr^<3+>の ^4T_1準位から ^2T_1. ^2E準位へのエネルギ-緩和時間の予備的測定を行った。その結果、上記の無輻射遷移は、遅くとも100ps以内には起こることがわかった。ルビ-結晶の場合には、3d準位間の光学遷移を禁制のため光励起に伴う吸収変化が小さく詳細な時間分解測定が困難なことから、より測定の容易なYAG中のCe^<3+>の許容遷移を用いて同様の測定を行った。ルビ-レ-ザ-の第二高調波により4f電子を5dの第二励起準位に励起し、最低励起準位への緩和に伴う励起状態吸収(ESA)の時間変化を測定したところ、室温・液体窒素いずれの温度でも、系の応答時間(20ps)内で立上がることがわかった。このことは、上記の遷移が準位内振動緩和に相当する時間内に起こることを示唆している。次年度、フェムト秒フォトリシス系が完成次第、さらに短い時間域での測定を行う予定である。MgAl_2O_4:Co^<2+>,Cs_2ZnCl_4:Ni^<2+>等な場にある3d電子系についても、同様の測定を試みたい。
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