1991 Fiscal Year Annual Research Report
フェムト秒分光法による固体中遷移金属イオンの超高速無輻射緩和過程の研究
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02640247
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Research Institution | TOHOKU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
鈴木 吉朗 東北大学, 工学部, 助手 (80133932)
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Keywords | フェムト秒分光 / 遷移金属イオン / エネルギ-緩和 / 無輻射遷移 / 励起刻態吸収 / ストリ-クカメラ |
Research Abstract |
前年度に引続いて、YAG結晶中のCe^<3+>イオンにおける光励起状態の緩和過程に関する時間分解分光測定を行なった。Ce^<3+>は、エネルギ-準位の相対関係が簡単であること、4f→5d遷移による大きな振動子強度をもつことなどから、固体中の励起d電子の緩和素過程を調べるのに最適なモデル系である。実験では、先ず紫外光パルスにより基底状態の4f電子を5dの第二励起準位(5db)にポンプした。5db電子は、直ちに最低5d準位(5da)に緩和するが、それに伴い、5daからさらに上の高励起準位への遷移による励起状態吸収(ESA)、5daから4f基底状態への遷移による黄緑発光(YGE)が生ずる。ポンプ&プロ-ブ法を用いてESAを、ストリ-クカメラを用いてYGEを検出し、その立上りの観測から5dbから5daへの緩和時間(Tba)を求めた。両測定から得られた〓baは、実験誤差内で一致し、10Kから150Kの温度範囲では約50psの一定値をとり、150K以上で急激に短くなり180Kでは5psに達した。このような〓baの温度依存性は、フランク・コンドン状態に挙げられた5db電子が準位内で急激に振動緩和した後、トンネリングあるいは熱活性化過程により5da準位に乗り移るとする静的無輻射遷移機構で理解される。 一方、本研究で製作したフェムト秒フォトリシス系の適用範囲を拡大するためには、ポンプ波長およびポンプ法の改善が必要であることがわかった。前者に関して、NaCl結晶中のF^+_2:S^<2->中心が1.4〜1.8μ域でのサブピコ秒レ-ザ活性中心として有望であることを明らかにした。また、後者に関しては、他の励起源により予め励起状態を蓄積しておき、この過渡的励起状態に対してポンプ&プロ-ブ法を適用する方法が考えられる。そこで、アルカリ塩化物中の緩和励起子をモデル系に選び、KrFレ-ザを第一励起源として、このようなタンデム型ポンプ法が、光励起状態の緩和ダイナミックスを調べる有効な手段であることを示した。
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Research Products
(1 results)