1990 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02640265
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
西尾 豊 東邦大学, 理学部, 講師 (20172629)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 亘 東邦大学, 理学部, 教授 (90011436)
梶田 晃示 東邦大学, 理学部, 教授 (50011739)
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Keywords | 有機伝導体 / 混合電子価 / 比熱 / 帯磁率 / 近藤効果 / 金属ー非金属転移 |
Research Abstract |
最近、混合原子価の銅原子を持った新しい有機伝導体(R1,R2ーDCNQI)2Cu(R1,R2=CH3,CH30,C1,Br,I)の存在が報告された。これらの物質はその輸送現象から次の2つのグル-プに分けられる。(1)金属的性質のものーー(DMeーDCNQI)2Cu(DMe0ーDCNQI)2Cu(2)急激な金属ー非金属転移を示すものーー(MeBrー,MeC1ー,BrC1ー,DBrー,DC1ーDCNQI)2Cu。グル-プ(1)の系は加圧によりグル-プ(2)に転移する。これらの金属不安定性は(DMeーDCNQI)2CuにMeBrを添加することでも引き起こされる。MeBr混晶系ではxの増大につれ、その電気伝導の温度依存性は、温度の低下にともなって金属ー非金属ー金属へと複雑に変化するリエントラントな振舞いがみられ、より高濃度側では絶縁体相へ転移する。 このMeBr混晶系において我々は低温における電子構造を明らかにするため比熱および帯磁率の測定を行った。その結果(DMeーDCNQI)2Cuの電子比熱係数γは典型的な一次元有機伝導体である(TMTSF)2C104の値のほぼ4倍であり、非常に大きな電子の状態密度の存在を示唆している。リエントラントな振る舞いを見せる試料では一層のγと、パウリの帯磁率の増大が観測され、状態密度の増大が明かとなった。これに対し低温域で非金属相が安定なグル-プ(2)の物質ではフェルミ準位近傍に金属的な連続スペクトルを待たず、かわりに局在電子系に特有なショットキ-型の比熱を示すことが明かとなった。この系の低温相では有機伝導体では初の高濃度近藤状態実現の可能性が指摘されており、もしこれが本当であるとするならばパウリの常磁性および比熱の増大は電子の有効質量の増大(いわゆる近藤効果による質量の増大)によるものと考えられる。これらの一つの傍証として高濃度近藤状態において通常観測されるT^<^>2の電気抵抗の温度依存性も観測した。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] H.Kobayashi: "Magnetic Susceptibility of(DMeーDCNQI)_2Cu and (DBrーDCNQI)_2Cu" J.Phys.Chem.Solids. 51. 533-537 (1990)
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[Publications] Y.Nishio: "Thermal and Magnetic properties of Organic Metal (DMe_<1ーx>MeBr_xーDCNQI)_2Cu" Proc.19th Int.Conf.Low Temp.Phys.(1990)
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[Publications] K.Kajita: "Anomalous Magnetotransport Phenomena in ー (BEDTーTTF)_2I_3" proc.Int.Conf.Phys.Chem.Organic.Supercon.51. 212-215 (1990)
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[Publications] Y.Nishio: "Enhancement of the Density of States in Organic Metal (DMe_<1ーx>MeBr_xーDCNQI)_2Cu" Solid State Commun.