界面活性剤ミセル水溶液の臨界ダイナミクスに関する研究

1991 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 02640271
• Research Institution: GUNMA UNIVERSITY
• Principal Investigator: 浜野 賢治 群馬大学, 工学部, 助教授 (00143199)
• Keywords: 界面活性剤水溶液 / 臨界現象 / 臨界普遍性 / 回転粘度計 / 非ニュ-トン粘性 / 相分離過程 / 光散乱 / ずり速度依存性

Research Abstract

液体混合物の臨界点近くでは、濃度ゆらぎの相関長は極端に大きくなり、その生存時間も長くなるため、臨界粘性は粘度計中のずり速度に依存し、いわゆる非ニュ-トン流体として振る舞う。この傾向はミセル溶液では特に顕著となる。この種の非線形効果についての知見を得ることは、分子集合体としてのミセルを形成する界面活性剤ミセル水溶液の臨界ダイナミクスを臨界普遍性の観点から調べる上で極めて重要である。本研究では、分光学的機能を備えた同軸円筒型の回転粘度計を用いて、この種の非線形効果を粘性と光散乱との同時測定から理解することを試みた。また、粘度計に圧力ラインを接続し、圧力クエンチの手法を用いて典型的な二成分液体混合物イソ酪酸+水系のずり流動場での相分離(スピノ-ダル分解)過程における粘性を時間の関数として調べた。以下にこれまでに得られた新たな知見を主に概略する。
1.非イオン性界面活性剤テトラエチレングリコ-ル・デシルエ-テル水溶液
(1)臨界粘性のずり速度依存性を特徴づける臨界指数値として0.02を、また、臨界温度のずり速度依存に関係する臨界指数値として、0.51を得た。これらの実験値は小貫・川崎の理論値とよく一致した。
(2)臨界点近くでの非ニュ-トン粘性の挙動をずり速度と臨界ゆらぎの生存時間の関数として調べ、単一の関数を用いて記述できることを明かにした。
(3)共存曲線内部の熱力学的不安定領域において、ずり流動場のもとでは非平衡定常状態が実現でき、この領域での粘性のずり速度依存性は(1)の結果と一致すること、また、この領域を越えると粘性のずり速度依存は相分離過程で現れる濃厚相と希薄相のドメインに大きく依存することを示唆する結果を得た。
2.二成分液体混合物イソ酪酸+水系
(1)臨界温度のずり速度依存に関係する指数値0.52は、ミセル系のそれとよく一致した。
(2)圧力クエンチの手法を用いて、ずり速度一定のもとでの相分離過程における粘性を時間の関数として調べた。比較的小さなずり速度(〜0.2s^<-1>)で、クエンチ幅(〜2bar)においては約50%の粘性異常が観測された。また、相分離過程の粘性異常は、ずり速度およびクエンチ幅、時間に大きく依存し、その挙動を統一的に理解するための基礎的デ-タを得た。
3.上記1.のミセル系について静的および動的光散乱実験を行い、このミセル系の臨界挙動が流体系の臨界点普遍性の類に合致することを明かにした。また、得られた臨界パラメ-タの値を用いて、1.の実験結果と2.のそれとを比較し、臨界普遍性の立場から実験結果を検討した。

Research Products

• [Publications] Fernand A.Goncalves: "Density and Viscosity of Tetralin and TransーDecalin" International Journal of Thermophysics. 10. 845-856 (1989)
• [Publications] Alfred H.Krall: "Viscosity of a PhaseーSeparating Critical Mixture" International Journal of Thermophysics. 10. 309-319 (1989)
• [Publications] Kenzi Hamano: "Critical Behavior of Nonionic Micellar Solutions" International Journal of Thermophysics. 10. 389-396 (1989)
• [Publications] Kenzi Hamano: "Critical anomaly in the viscosity of a nonionic micellar solution" Physics Letters A. 150. 405-408 (1990)
• [Publications] Kenzi Hamano: "Critical viscosity in the nonionic micellar solution of tetraethylene glycol nーdecyl ether in water" Reports on Progress in Polymer Physics in Japan. 33. 29-30 (1990)
• [Publications] Kenzi Hamano: "Universal exponents for a nonionic micellar solution of tetraethylene glycol decylether in water" Journal of Chemical Physics. 94. 2172-2175 (1991)
• [Publications] Kenzi Hamano: "Dynamical universality in a critical mixture of a nonionic micellar solution" Physical Review A. 43. 6881-6886 (1991)
• [Publications] Nobuhiro Kuwahara: "Universal asymptotic behavior of dynamics in a nonionic micellar solution" Physical Review A. 44. R6177-R6180 (1991)
• [Publications] Kenzi Hamano: "Dynamical exponents in a nonionic micellar solution close to the critical mixing point" Reports on Progress in Polymer Physics in Japan. 34. 331-332 (1991)
• [Publications] Kenzi Hamano: "Universal Exponents for a Nonionic for a Nonionic MIcellar Solution close to the Critical Mixing Point" Reports on Progress in Polymer Physics in Japan. 34. 333-334 (1991)
• [Publications] Kenzi Hamano: "Shearーinduced critical dynamics in a nonionic micellar solution" Physical Review Letters,to be submitted.