1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02640275
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology, Faculty of Engineering and Design |
Principal Investigator |
小田垣 孝 京都工芸繊維大学, 工芸学部, 教授 (90214147)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樋渡 保秋 金沢大学, 理学部, 教授 (20019491)
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Keywords | ガラス転移 / トラッピング拡散 / 過冷却液体 / 準異常拡散 / αー緩和 / 待時間分布 / 引き伸ばされた指数関数 |
Research Abstract |
本研究の主たるテ-マは、過冷却液体中の原子にみられるストキャスティックな運動をトラッピング拡散模型を用いて表し、ガラス転移点近傍の過冷却液体の動的性質を理解するとともに、ガラス転移に対する知見を得ることである。まず、モデルと実在系との対応づけを行うとともにモデルの妥当性を検討するために、原子のジャンプ運動の待ち時間分布を比較した。ソフトコア系の原子のジャンプ運動を解析し、待ち時間分布関数が巾関数のテイルを持つことが示された。これは、ジャンプ率が巾関数分布をするトラッピング拡散模型から期待されるものと一致しており、モデルの妥当性が確立された。さらに、待ち時間分布の比較から、トラッピング模型のパラメ-タ-(巾関数分布の巾)とソフトコア系の熱力学変数(カップリング定数)との具体的な関係式を得た。つぎに、アパラントガラス転移の本質にせまるため、有限時間のシミュレ-ションによって求められる物理量の観測時間依存性を、トラッピング拡散模型によって解析した。ある物理量を与えられた精度内で求めるために必要な時間は、ガラス転移点で急激に増加すること、従って計算機シュミレ-ションに必要な時間が飛躍的に大きくなること、また準異常拡散がガラス転移点より上で起ることによって見掛上の転移が見られることを示した。さらに有限時間での振舞の解析を詳しく行うために、トラッピング拡散模型の中間散乱関数および動的構造因子を解析した。準異常拡散によって、中間散乱関数が引伸ばされた指数関数型の減衰をする或いは動的構造因子に巾関数型の減少をする振動数領域が有るといういわゆるαー緩和の特徴が現れることを示した。ジャンプ率の分布と自由体積、配置エントロピ-との関連についても考察を深めた。
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[Publications] T.Odagaki: "Residence time distribution of a tracer atom in supercooled fluids" J.Phys.:Condens.Matter. 3. 5191-5194 (1991)
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[Publications] Y.Hiwatari: "Dynamical Singularities near the LiquidーGlass Transition:Theory and Molecular Dynamics Study" Solid State Ionics. 47. 179-222 (1991)
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[Publications] T.Odagaki: "Stochastic dynamics in a supercooled fluid" Proceedings of First Tohwa University International Symposium on Slow dynamics in Condensed Matter. (1992)
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[Publications] T.Odagaki: "Apparent subdiffusive properties of a supercoded fluid"