1990 Fiscal Year Annual Research Report
相対論的配置間相互作用法による原子系のエネルギ-準位の計算
Project/Area Number |
02640293
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
香川 貴司 奈良女子大学, 理学部, 教授 (30031686)
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Keywords | 原子構造 / 原子スペクトル / 高電離イオン / 振動子強度 |
Research Abstract |
本年度の研究では,ディラック・ブライトのハミルトニアンから出発し相対論的に原子系を取り扱う効率的な方法として,相対論的配置間相互作用(RCI)法を取り上げ、高電離イオンの構造研究に適用した。この研究の内容と実績は,以下の三つにまとめられる。 まず第一には,RCI波動関数を構成するために適当な相対論的一電子関数の組を解析的な形のものを使うことを提案した。その理由は,ハミルトニアンの行列要素をはじめ様々な物理量の計算が解析的に行えるようになり,膨大なエネルギ-準位や遷移確率の計算が効率的にしかも系統的に行えるからである。この一電子関数の組は,著者が研究を続けてきた解析的基底を用いた相対論的ハ-トリ-・フォック法により得られ,RCI波動関数は,この一電子関数により作られた多数の配置関数の線形結合として書かれる。 第2には、RCI計算のための計算機プログラムの開発を行い,原子系のエネルギ-および波動物数,さらに,光学的遷移確率などの物理量を,計算機のファイルシステムを駆使して容易に計算できるシステムを構築したことである。 第3には,この方法をネオン様原子系の構造研究に適用し,観測されたスペクトルの同定に際しRCI計算が有用であることを示したことである。計算は,1sから5fまでの一電子関数を用い,アルゴンからウランまでの間の11個の元素に対して行った。特に基底状態から高い励起状態への許容遷移について,遷移振動数とその振動子強度の計算から,実験的にまだスペクトルの同定が進んでいない元素や,実験そのものが困難な元素についても,等電子系列のスペクトルが原子番号に依存してどう変化していくかを示した。また、同定が確立されているスペクトルについても再度検討が必要なものもあることを指摘した。
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